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誤判定が起きる4つの理由

AI画像判定ツールが誤る主な理由
理由何が起きるか根拠
学習していない生成AIの画像特定の生成AIの画像で学習した判定器は、新しい生成AIの画像を見抜けず、本物と判定しやすいOjha ほか(CVPR 2023)、Corvi ほか(ICASSP 2023)、NIST
圧縮・縮小・SNS での再保存画像を縮小したり JPEG で圧縮し直したりすると、判定の手がかりが弱まり、誤りが増えるNIST、Corvi ほか、TrueFake(2025)
学習データの偏り学習用のデータの圧縮の仕方や画像の大きさの偏りを、判定器が手がかりとして覚えてしまうGrommelt ほか(2024)
本物に近い AI 画像人でも見分けにくい AI 画像では、既存の判定器のほぼすべてが本物と判定したYan ほか(ICLR 2025)

NIST の報告書(NIST AI 100-4、2024年11月)は、学習に使われていない生成AIの画像に対しては、とくに圧縮や縮小をした後で、判定器の誤りがかなり大きくなる傾向があると指摘しています。判定器は特定の生成AIに結びついていて、その生成AIの画像でしかうまく働かないことが多い、とも述べています。

「精度◯%」と現実の差

判定ツールの紹介には「精度◯%」と書かれることがありますが、その数字は、決まったデータで測った結果であることがほとんどです。実際にネットで出回った画像で試すと、性能は大きく下がることが報告されています。

  • NeurIPS 2025 で発表されたベンチマーク(AIGIBench)は、管理された条件では高い精度を示す判定器も、現実のデータでは性能が大きく下がるとしています。
  • 2024年に実際に出回ったディープフェイクを集めたベンチマーク(Deepfake-Eval-2024)では、画像の判定モデルの性能を表す AUC という指標が、それまでのベンチマークと比べて45%下がったと報告されています。

つまり、「精度99%」のような数字は、あなたの手元の画像でも99%当たるという意味ではありません。どの生成AIの画像で、どんな加工を経た画像で測った数字かを確かめる必要があります。

実際に起きた誤判定

報道された誤判定の例
時期何が起きたか出典
2023年9月AI 判定サービスを試したところ、写真コンテストの入賞作(実写)20枚のうち6枚を AI と判定し、圧縮した生成AIの画像10枚のうち7枚を本物と判定したBellingcat
2023年10月無料の判定ツールが、政府が投稿した写真を AI 製と判定した。専門家は AI の痕跡はないと指摘した404 Media
2024年6月Meta の自動表示で、実写に「Made with AI」が付いた。Meta は表示を「AI info」に改めたTechCrunch、Meta
2026年5月海洋堂の専属カメラマンが撮った商品写真に、X が自動で「AIで生成」のラベルを付けたITmedia AI+
2022年9月「ドローンで撮った静岡の水害」として出回った画像を、投稿者が画像生成AIで作ったと認めた(AI 画像が本物として広まった例)ITmedia NEWS、総務省 情報通信白書

本物を AI と判定する誤り(偽陽性)は、とくに害が大きくなりえます。NIST も、人が作ったものを AI 製と判定する誤りは極めて大きな損害を与えうると指摘しています。

「AIの確率◯%」の読み方

判定ツールが「AIの確率 87%」のような数字を出しても、その画像が87%の確かさで AI 製という意味にはなりません。数字の意味は、判定器の学習の仕方や、どこで線を引くか(しきい値)、そして調べる画像のうち本当に偽物がどれだけ混ざっているかによって変わります。

  • NIST は、正解率という数字は、本物と偽物の数の偏りで大きくゆがみうるとし、評価の結果は使う場面から切り離して解釈するのが難しいとしています。
  • ディープフェイク検出の大規模なデータセットの論文(DFDC)は、偽物がとても少ない現実の分布では、非常に精度の高いモデルでも、誤って偽物とした数が本当の偽物の数を上回ると指摘しています。

仮の例:調べる画像の100枚に1枚だけが AI 画像で、判定ツールが本物の写真の5%を誤って「AI」と判定するとします。1,000枚を調べると、AI 画像10枚をすべて見抜けても、本物990枚のうち約50枚が「AI」と判定されます。このとき「AI」と出た約60枚のうち、本当に AI 画像なのは6枚に1枚ほどです。

判定ツールと来歴(C2PA・SynthID)の違い

  • 来歴(C2PA・コンテンツクレデンシャル):撮影や編集の記録を、電子署名つきで画像に付ける規格です。C2PA の解説は、来歴はディープフェイクの検出などの手法を補うものとし、来歴の情報だけでは内容が真実か・正確かはわからないとしています。主要な SNS は投稿時にメタデータを消すため、拡散した後は来歴を確かめにくいことも、総務省の実証事業の報告書で指摘されています。
  • 電子透かし(SynthID):Google は2026年10月7日、SynthID の判定(SynthID Detector)を誰でも使えるようにしたと発表しました。確かめられるのは、Google と提携先の AI で作られた画像・動画・音声です。ほかの生成AIの画像には透かしがないので、透かしが見つからなくても AI 画像でないとは限りません。確かめ方はSynthIDとは?で解説しています。

来歴や電子透かしの記録が見つかれば強い手がかりになりますが、見つからないことは本物の証明にはなりません。詳しくはC2PA(コンテンツクレデンシャル)とはをご覧ください。

日本の公的機関の見方

  • 総務省の『令和6年版 情報通信白書』は、偽・誤情報への対策は各方面で取り組まれているものの「いたちごっこ」の様相を呈しているとし、判別の技術を使ってもフェイク情報を正確に判別するのは難しいと見られている、としています。
  • 総務省の実証事業の成果報告書(2026年3月)は、作られた後に見破る方式だけでは判別が難しく、感度を上げるほど実写を偽物と判定する誤りが増えるとまとめています。
  • 政府広報オンラインは、AI で作ったディープフェイク動画は人の目では見抜くことが難しいとし、画像については、検索して全く同じ画像が見つからないか、過去に撮られた無関係の写真ではないかを確かめるよう勧めています。

結果の読み方・使い方

  1. 数字ひとつで決めない。判定ツールの結果は判断材料の一つです。とくに「AI の疑い」という結果だけで、人を責めたり処分したりしないでください。
  2. 元のファイルで調べる。SNS から保存した画像やスクリーンショットは、圧縮や縮小で手がかりが失われています。できるだけ元のファイルを手に入れます。
  3. 画像検索で元の画像を探す。同じ画像や、過去の無関係な写真が見つかることがあります(画像検索で出てこないとき)。
  4. 来歴と撮影情報を確かめる。C2PA の記録や撮影情報が残っていれば、強い手がかりになります。
  5. 入手の経緯を確かめる。誰が、いつ、どこで撮ったものか。出所の説明は、判定ツールの結果より重く見られることがあります(捏造画像が問題になった裁判)。
  6. 重要な場面では専門家に相談する。裁判や処分に関わるときは、弁護士や鑑定の専門家に相談してください(写真・画像の鑑定はどこに頼める?)。

PEA の考え方

PEA は、こうした限界があるため、精度の数字ひとつで結果を示すことはしません。性質の異なる8つの解析の結果を、確認できた事実と気になる所見に分けて示し、1〜10 のグレードを付けます。動画から切り出した画像や画面を撮り直した画像など、根拠を示せないものは「判定外」とします。PEA の結果も判断材料の一つで、見逃しや誤りがありえます。

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よくある質問

AI画像判定ツールの精度はどのくらいですか?

条件によって大きく変わります。米国立標準技術研究所(NIST)は、学習に使われていない生成AIの画像に対しては、とくに圧縮や縮小をした後で誤りがかなり大きくなる傾向があると指摘しています。実際に出回った画像で試したベンチマークでも、管理された条件より性能が大きく下がると報告されています。「精度◯%」は、どの画像で測った数字かを確かめてください。

本物の写真が「AI」と判定されることはありますか?

あります。調査報道サイトの Bellingcat が試したところ、写真コンテストの入賞作(実写)20枚のうち6枚が AI と判定されました。2026年5月には、X が海洋堂の実写の商品写真に自動で「AIで生成」のラベルを付けたことも報じられています。NIST も、人が作ったものを AI 製と判定する誤りは極めて大きな損害を与えうるとしています。

「AIの確率87%」と出たら、AI画像ですか?

それだけでは決められません。数字の意味は、判定器の学習の仕方やしきい値、調べる画像にどれだけ偽物が混ざっているかで変わります。偽物が少ない現実の状況では、精度の高いモデルでも、誤って偽物とした数が本当の偽物の数を上回りうると指摘されています。元のファイル、画像検索、来歴(C2PA)、入手の経緯と合わせて判断してください。

無料の AI画像判定サイトは信用できますか?

どのツールも見逃しや誤りがあり、単独で十分な解決策になる技術はないと NIST は述べています。総務省の情報通信白書も、判別の技術を使ってもフェイク情報を正確に判別するのは難しいと見られているとしています。結果は判断材料の一つとして使い、人を責めたり処分したりする根拠にはしないでください。

SynthID や C2PA があれば、AI画像かどうかわかりますか?

記録が見つかれば強い手がかりになりますが、見つからなくても本物とは限りません。Google の SynthID Detector(2026年10月に誰でも使えるようになった)で確かめられるのは、Google と提携先の AI で作られたものです。C2PA の解説も、来歴の情報だけでは内容が真実かどうかはわからないとしています。主要な SNS は投稿時にメタデータを消すため、拡散後は来歴を確かめにくいこともあります。

出典