この記事は、公開された判決・報道・専門家の解説をもとに事件を要約したもので、法的な助言ではありません。関係者を特定したり、評価したりする意図はないため、氏名や地域などは記載していません。個別の事件については弁護士に相談してください。記事の情報は2026年9月26日時点のものです。
事件の早見表
| 事件 | 問題になった点 | PEA で役立つこと |
|---|---|---|
| SNS の返信を写したとされる画像で損害賠償を求めた訴訟(民事・大阪地裁 2024年8月) | 返信先・投稿日時の表示がなく、切り取られた可能性。出所が不明 | 画面のスクリーンショットとして、投稿を特定する表示の有無と切り取りの形跡を確認する |
| AI で作った画像の無断複製で書類送検(刑事・2025年11月)/無断使用で賠償を求める訴訟(民事・大阪地裁で係属中) | AI で作った画像が著作物にあたるか。誰がいつ作ったか | 元のファイルが、その時点で存在し以後変わっていないことを、第三者が照合できる形で残す |
| 実在の子どもの写真を AI で加工した画像を所持(刑事・名古屋地裁 2026年6月)ほか | AI で加工した画像が、撮影されたと誤信されるほど精巧 | 性的な画像は PEA では扱いません。警察や専門の窓口へ |
事件1:SNS の返信を写したとされる画像(大阪地裁 2024年8月30日判決)
何があったか
- SNS 上の誹謗中傷を受けて亡くなった方の遺族が、ある返信を写したとされる画像を、第三者から入手しました。画像は、特定のアカウントから故人に中傷の返信が投稿されたように見えるものでした。
- 遺族は、アカウントの利用者を特定する手続(発信者情報開示)を経て、利用者側の一家に損害賠償を求めて提訴しました。
- 訴えられた一家は、そのような投稿はしていないと主張しました。画像は捏造されたものだとして、遺族と代理人弁護士に対し、不当な訴えで損害を受けたとして賠償を求める訴えを起こしました。
- 大阪地裁は2つの訴えをまとめて審理し、どちらの請求も棄却しました。控訴の有無は、公開された資料では確認できませんでした。
専門家の解説では、この画像が AI によるものか、従来の画像編集によるものかは明らかでないとされています。AI の判定ではなく、画像の中に「あるはずの表示がない」ことと、出所が問題になった事件です。
判決が見た点
報道と判例の解説によると、遺族の損害賠償の請求について、判決は次の点を挙げました。
- 返信であれば表示されるはずの返信先や投稿日時が、画像に表示されていない
- 画面を切り取るなどの加工がされた可能性が高い
- 画像の出所がわからない(第三者から入手したもの)
- 代理人弁護士も、返信そのものが存在するかを確認できなかった
そのうえで、画像が捏造された可能性を否定できず、この画像があることだけでは、そのアカウントから返信が投稿されたとは認められないとしました。
一方、一家が求めた「不当な訴え」の賠償については、次のような理由で、遺族と代理人の提訴は違法とまではいえないとしました。
- 返信先や日時の欠落は、後から振り返れば疑わしい点だが、一見して明らかに捏造だとはいいにくい
- 当時、捏造された画像のせいで無関係の人が誤って訴えられた事例が知られていたとは認められない
- 発信者情報開示を認める判決が確定していた
この事件では、身に覚えのない投稿で訴えられた側と、画像を本物と信じて訴えた側の双方が、長い裁判の負担を負いました。弁護士向けの解説は、提出の前に「客観的で具体的な疑い」がある画像については、追加で調べるべきだと整理しています。
PEA ならどう役立つか
PEA は、この判決が見た点を、画像を受け取った時点で確かめられるようにしています。
- 画面のスクリーンショットかどうかを判定し、投稿を特定する表示を一覧で示します。投稿日時、アカウント名や ID、返信先・宛先、画面上部の時刻や電池の表示(画面全体を保存したか)、URL が写っているか、切り取りの形跡や一部の文字だけ書体が違うといった点がないかを確認します。訴える前・提出する前に「具体的な疑い」を見える形にできます。
- AI で作られた画面かどうかや、加工の手がかりは、写真と同じように判定します。ChatGPT などの画像生成 AI で作られた画面なら、埋め込まれた電子透かしや記録から判定できる場合があります。
- 痕跡が見つからなくても、「投稿が実在した」とは言いません。画面の表示を書き換えてから保存すると、画像には加工の痕跡が残りません。そのため PEA は、痕跡が見つからない画面のスクリーンショットをグレード6(改変の兆候なし)までとし、画面に表示された内容が実在したかは対象外であることを鑑定書に明記します。捏造された画面に「本物」のお墨付きを与えないためです。
- 根拠を示せない画像には、グレードを付けません。強い圧縮で判断の材料が残っていない画像などは「判定外(Grade -)」とし、有人鑑定をご案内します。
- 突きつけられた側も使えます。身に覚えのない投稿の画像を示されたとき、表示の欠落や加工の手がかりを根拠つきで整理し、弁護士に相談する資料にできます。
- 受け取った時点の状態を固定できます。鑑定書(1件¥1,000)にすると、そのファイルが発行の時点で存在し、以後変わっていないことを、電子署名とタイムスタンプで第三者が照合できます。
PEA は、投稿が実在したか、誰が投稿したかは確かめられません。それを確かめる材料は画像の外にあります(投稿の URL、アーカイブ、サービス運営者の記録、発信者情報開示の手続など)。PEA の結果は、どこを確かめるべきかを示す手がかりとして使ってください。
事件2:AI で作った画像の著作権(刑事・民事)
何があったか
- 刑事(2025年11月):生成AIで作られ SNS に投稿された画像を無断で複製し、販売する電子書籍の表紙に使った疑いで、千葉県警が男性を著作権法違反の疑いで書類送検しました。県警は、AI に具体的な指示や入力を繰り返して制作された画像であることから、著作物にあたると判断したと報じられ、全国で初めての摘発とみられています。2026年9月時点で、検察の処分は報じられていません。
- 民事(大阪地裁・係属中):AI で作ったヘアモデルの画像を販売する画像制作会社が、画像240点を無断で使われたとして、美容室を経営する会社に約2600万円の賠償などを求めて提訴したと報じられています。美容室側は、AI の生成物は著作物ではないと反論しています。判決はまだ報じられていません。
AI で作った画像が著作物にあたるかは、一律には決まっていません。文化庁が公表している考え方では、人が AI を道具として使って創作的に関わったといえるかを個別に判断し、指示や入力の内容、生成を繰り返した経緯、複数の生成物からの選択、生成後の加筆・修正などが考慮されるとされています。 つまり、「どのように作ったか」を後から説明できるかどうかが、作った人にとって大切になります。
PEA ならどう役立つか
- 作品のファイルが「その時点で存在した」ことを残せます。完成した画像や制作途中のファイルを鑑定書にしておくと、そのファイルが発行の時点で存在し、以後変わっていないことを、第三者が証明書番号で照合できます。指示文(プロンプト)や作業の記録は、あわせて別に保存しておいてください。
- 画像に残る AI の記録を確かめられます。電子署名(C2PA)やメタデータに、生成AIで作成・編集した記録が残っているかを確認できます。作った側・使った側のどちらにとっても、事実関係を整理する材料になります。
PEA は、画像が著作物にあたるか、著作権の侵害になるかは判断できません。また、2つの画像が見た目の上で同じ作品かを比べる機能は、現在はありません(照合できるのは、手元のファイルが鑑定したファイルとまったく同じかどうかです)。
事件3:AI で加工された性的な画像(刑事)
- 2025年10月、生成AIで芸能人に似せて作ったわいせつな画像を有料で閲覧させたとして、警視庁が男性をわいせつ電磁的記録媒体陳列の疑いで逮捕しました。
- 2026年6月4日、名古屋地裁は、実在する子どもの写真を AI で加工した画像について、撮影されたと誤信するほど精巧なものだとして、児童ポルノにあたると認定しました(ほかの罪とあわせて有罪)。AI で加工した画像の所持に児童買春・ポルノ禁止法を適用した判決として報じられています。
AI で作った・加工した画像は、本物の写真と区別がつかないほど精巧になっています。名古屋の判決では、実在する子どもの写真をもとにした画像であることが、児童ポルノと認定された理由として報じられました。一方で、実在の人物を傷つける性的な画像に今の法律を当てはめにくい場面があるとして、法整備の遅れも指摘されています。
性的な画像は、PEA に送らないでください。児童の性的な画像や、本人の同意のない他人の性的な画像の提出は、利用規約で禁止しています。ご自身や家族が被害にあった場合も、画像を広げないことを優先し、警察(警察相談専用電話 #9110、性犯罪の被害は #8103)や、削除の方法を相談できる違法・有害情報相談センターに相談してください。
3つの事件に共通すること
3つの事件は性質が違いますが、どれも「画像を見ただけでは、本物か、誰がどう作ったかが決まらない」という点で共通しています。専門家の解説でも、画像などの証拠は次の4つを分けて考えるべきだと整理されています。
| 観点 | 確かめること | PEA の役割 |
|---|---|---|
| ① 出所・由来 | どこから、誰が、いつ、どうやって入手したか | 対象外。入手の経緯はご自身で記録してください |
| ② 変わっていないか | 保全した後に、ファイルが1バイトも変わっていないか | 鑑定書のハッシュ値・電子署名・タイムスタンプで照合できる |
| ③ 誰がどう作ったか | 撮影・作成した人、使った機器やソフト、AI の使い方 | 電子署名(C2PA)・メタデータの記録を確認できる |
| ④ 内容が事実か | 写っていること・書かれていることが本当か | 生成・加工の手がかりと、画面の表示の欠落を示す(事実そのものは確かめられない) |
大阪地裁の事件で問題になったのは、主に①(出所がわからない)と④(あるはずの表示がない)でした。AI の判定の数字だけで結論を出すのではなく、それぞれの観点で確かめられる材料を積み重ねることが、事実を語る人を支える方法です。
画像を証拠として出す人のための備え
- 元のファイルを残す。撮影・保存したままのファイルを残し、見せるための加工や切り取りは必ずコピーに対して行います。
- SNS の投稿なら、画面全体と URL を残す。投稿日時・返信先・アカウントが写るように画面全体を保存し、投稿の URL と保存した日時を控えます。投稿した人のアカウントのページも保存しておきます。
- 入手の経緯を書き出す。自分で保存したのか、誰から、いつ、どの方法で受け取ったのかを記録します。第三者から受け取った画像は、特に大切です。
- 消される前に、第三者の記録を残す。投稿がまだ見られるうちに、Web ページの保存サービスでの記録や、公証人に内容を確認してもらう方法(事実実験公正証書)も検討します。
- 出す前に、欠けている点がないか確かめる。日時や返信先の表示の欠落、切り取り、出所の不明がないかを確認し、疑いがあれば弁護士と追加で調べます。
写真の証拠の備えについては、証拠の写真を「AIで作った」「加工した」と疑われたらでも詳しく解説しています。
画像を突きつけられた人のための備え
- SNS で反論したり、言い争ったりしない。画像をさらしたり相手を非難したりすると、別のトラブルを招くことがあります。
- 早めに弁護士に相談する。訴えられた場合は、期限のある手続があります。
- 元のデータと出所の説明を求める。画像だけでなく、元の投稿の URL、元のファイル、入手の経緯を示してもらうよう求めます。
- 具体的な点を整理する。日時や返信先の表示の欠落、切り取り、一部の文字だけ書体や位置が違う点など、画像のどこがおかしいかを具体的に挙げます。「偽物だ」と言うだけより、はるかに伝わります。
- 自分の記録を保全する。サービスの機能で、自分の投稿の履歴やアカウントのデータを保存しておきます。
PEA でできること・できないこと
PEA は、画像を性質の異なる8つの解析で調べ、AI による生成・加工の手がかりを1〜10のグレードで示す画像鑑定サービスです。判断の根拠を開示し、鑑定書は電子署名とタイムスタンプで封印して、第三者が証明書番号で照合できるようにしています。
| 項目 | できること | できないこと |
|---|---|---|
| AI 生成・加工 | 性質の異なる解析で手がかりを探し、根拠つきでグレードを示す | あらゆる生成・加工を確実に見抜くこと |
| SNS の投稿の画面 | AI 生成・加工の手がかりを判定し、投稿を特定する表示の有無と切り取りの形跡を示す。痕跡がない場合はグレード6まで | 投稿が実在したか、誰が投稿したかを確かめること |
| 根拠を示せない画像 | 無理にグレードを付けず「判定外(Grade -)」とし、有人鑑定をご案内する | 材料が残っていない画像から、自動で結論を出すこと |
| ファイルの状態 | 鑑定書の発行の時点で存在し、以後変わっていないことを照合できる形で残す | 撮影した日時や撮影者そのものの証明 |
| 著作権 | 画像に残る AI 生成の記録(C2PA・メタデータ)の確認 | 著作物かどうか、侵害にあたるかの判断 |
PEA の鑑定書が、裁判で証拠として採用されることは保証できません。証拠をどう評価するかは、裁判所が判断します。鑑定の結果は判断材料の一つとして、元のファイルや入手の記録と合わせて使い、重要な場面では弁護士に相談してください。
よくある質問
SNS の投稿のスクリーンショットは、裁判で証拠になりますか?
提出することはできますが、どこまで信用されるかは裁判所が判断します。2024年8月の大阪地裁の判決では、返信先や投稿日時の表示がなく切り取られた可能性が高いこと、出所がわからないことなどから、捏造された可能性を否定できないとされました。画面全体の保存、URL と日時の記録、入手経路の記録をあわせて残すことが大切です。
身に覚えのない投稿の画像で訴えられたら、どうすればよいですか?
SNS で反論したり言い争ったりせず、早めに弁護士に相談してください。そのうえで、元の投稿の URL や元のデータ、入手経路の説明を求め、日時や返信先の表示の欠落、切り取り、文字の不自然さなど、画像の具体的な点を整理するのが有効です。自分のアカウントの投稿履歴も保存しておきましょう。
AI で作った画像にも著作権はありますか?
一律には決まっていません。文化庁が公表している考え方では、人が AI を道具として使い、創作的に関わったといえるかを個別に判断するとされ、指示や入力の内容、生成を繰り返した経緯、複数の生成物からの選択、生成後の加筆・修正などが考慮されます。2026年9月時点で、この点を正面から判断した判決は報じられていません。
PEA の鑑定で「この画像は捏造ではない」と証明できますか?
できません。PEA が示せるのは、画像に AI による生成・加工の手がかりがあるか、投稿を特定する表示(日時・返信先など)が写っているか、ファイルが鑑定書の発行時点で存在し以後変わっていないか、です。SNS の投稿やメッセージの画面のスクリーンショットは、痕跡が見つからなくてもグレード6(改変の兆候なし)までとし、投稿が実在したことの根拠にはしません。根拠を示せない画像は「判定外(Grade -)」とし、有人鑑定をご案内します。
性的なディープフェイクの被害にあいました。PEA で鑑定できますか?
性的な画像は PEA に送らないでください。児童の性的な画像や、本人の同意のない他人の性的な画像の提出は利用規約で禁止しています。ご自身が被害にあった場合も、画像を広げないことを優先し、警察(#9110、性犯罪の被害は #8103)や、削除の方法を相談できる違法・有害情報相談センターに相談してください。
出典
- 毎日新聞: 大阪地裁判決の報道(2024年8月30日)
- 産経新聞: 大阪地裁判決の報道(2024年8月30日)
- 日本経済新聞(共同通信): 大阪地裁判決の報道(2024年8月30日)
- Westlaw Japan 判例コラム 第346号(大阪地判令和6年8月30日の解説、2025年4月8日)
- 判例タイムズ 1530号(大阪地判令和6年8月30日を掲載)
- 時事通信: AI画像を無断複製した疑いで書類送検(2025年11月20日)
- 日本経済新聞: AI生成画像を無断複製、著作権法違反の疑いで書類送検(2025年11月)
- 朝日新聞: AIで作ったモデルの画像と「酷似」で裁判に 著作権は認められる?(2026年8月)
- 文化庁: AIと著作権(「AIと著作権に関する考え方について」令和6年3月15日 ほか)
- 東京新聞: 〈社説〉生成AIで作ったポルノ「性的ディープフェイク」(2025年12月10日)
- 時事通信: AI生成画像も「児童ポルノ」と認定した名古屋地裁判決の報道(2026年6月4日)
- AIで作成・加工された証拠と民事訴訟の対応(山中法律事務所、2026年8月15日)
- 日本公証人連合会: 事実実験公正証書
- 警察庁: 性犯罪被害相談電話 全国共通番号「#8103(ハートさん)」
- 違法・有害情報相談センター(総務省 委託事業)