気づいたら、まず撮る写真

傷を見つけたら、動かしたり洗ったりする前に、次のものを撮ります。警察や保険会社に説明するときの材料になります。

車のいたずら傷に気づいたら撮っておきたい写真
撮るもの撮り方
車の全体ナンバーが入るように、前後・左右から。どの車かを示す
傷の全体傷がどのパネル(フェンダー・ドアなど)にまたがっているかがわかるように、少し離れて
傷のアップ長さと深さがわかるように。定規やメジャーを当てる。光の当たり方を変えて何枚か
止めていた場所駐車場の区画番号、周りの様子、防犯カメラの位置
ほかの被害タイヤ、ミラー、ガラス、落書きなど。車の中も確かめる
  • 時間の幅を書き留める。いつ止めて、いつ傷に気づいたかを書きます。駐車券やレシートなど、時刻がわかるものも残します。
  • 撮ったままの元のファイルを残す。明るさの調整やトリミングをせず、そのまま保存します。
  • 修理の前に撮る。修理してしまうと、傷の状態を示せなくなります。

警察への届出(被害届と告訴)

他人の物を壊したり傷つけたりすると、器物損壊罪(刑法第261条)にあたる可能性があり、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金若しくは科料です。わざと傷つけた場合が対象で、過失で壊しただけでは処罰されません(法テラス)。

  • 被害届を出す。三井住友海上は、いたずらやあて逃げの被害は警察への届出を勧めています。最寄りの警察署に相談してください。
  • 持っていくもの。大阪府警の阿倍野警察署は、器物損壊の届出には、壊れた状況の写真や見積書など被害を証明する資料を持参するよう案内しています。日時・場所・状況を聞かれるので、メモにまとめておきます。届け出るのは、原則として被害者本人です。
  • 受理番号を控える。被害届が受理されると受理番号が出され、後日、電話で問い合わせることもできます(阿倍野警察署)。保険会社に聞かれることがあるので控えておきます。
  • 器物損壊罪は「親告罪」です。告訴がなければ起訴できません(刑法第264条)。告訴は、原則として犯人を知った日から6か月以内です(刑事訴訟法第235条)。被害届は被害の事実を届け出るもの、告訴は処罰を求める意思を示すもので、別の手続です。どうするかは警察に相談してください。

防犯カメラ・ドラレコの映像を残す

  • 周りの防犯カメラは、早めに。日本防犯設備協会の調査(2026年7月)では、防犯カメラの映像の保存期間の目安は、集合住宅で3週間、小売業で1週間、サービス業で2週間ほどです(業種や設備によって違います)。気づいたらすぐに、駐車場や建物の管理者に、映像が残っているかを確かめてもらいます。
  • 映像の確認は、警察を通じて頼むことになる場合も。管理者は、警察からの照会であれば、法令にもとづいて映像を提供できます(個人情報保護委員会の Q&A)。個人の求めに応じるかは管理者の判断なので、被害届を出したうえで警察に相談するのが確実です。
  • 自分のドラレコを確かめる。JAF によると、ドライブレコーダーは容量がいっぱいになると古い映像を消して上書きします。駐車中に振動や動きを感じると録画を始める機種もあります。上書きされる前に、映像を書き出して保存してください。国民生活センターは、SD カードの不具合で記録されていないことがあるとして、映像の定期的な確認と SD カードの交換を勧めています。

車両保険で補償されるか

いたずら・落書きによる傷は、多くの保険会社で、補償の広い「一般型」でも、範囲を限定した「エコノミー型」でも、車両保険の補償の対象です。主な保険会社の公式の案内で確かめた内容は次のとおりです(2026年10月時点。契約の始期によって違うことがあります)。

車両保険でのいたずら・落書きの扱い(各社の公式の案内から)
保険会社一般型エコノミー型(限定型)
東京海上日動対象対象
損保ジャパン(2027年1月1日以降に始まる契約)対象対象
三井住友海上(2026年1月1日以降に始まる契約)対象対象
ソニー損保(2024年1月1日以降に始まる契約)対象対象
SBI損保対象対象
おとなの自動車保険(SOMPOダイレクト)対象「車対車+A」は対象。「車対車(車との衝突のみ)」は対象外
  • タイヤだけの損害は対象外とする会社があります(ソニー損保・SBI損保・SOMPOダイレクト)。
  • 修理の前に保険会社に連絡する。SOMPOダイレクトは、保険会社に連絡する前に修理しないよう案内しています。
  • 免責金額に注意。SBI損保の例では、免責金額が5万円で修理代が6万円なら、支払われる保険金は1万円です。

等級と、保険を使うかの判断

  • いたずらは「1等級ダウン事故」です。損害保険料率算出機構の資料では、いたずら、落書き、窓ガラスの破損などによる事故は1等級ダウン事故とされ、翌年の等級が1つ下がり、保険料の割引が少ない「事故有」の期間が1年加わります。
  • 例:SOMPOダイレクトによると、14等級(割引52%)でいたずらに保険を使うと、翌年は13等級・事故有で割引24%になり、2年後に14等級(52%)に戻ります。
  • 修理代と比べる。損保ジャパンの SOMPO CAR MAGAZINE は、1等級ダウンなら保険料が上がる分と修理代を比べるよう勧めています。等級の上がり方が遅れる影響は数年続くこともあるので、保険会社に試算してもらうと確実です。

いたずら傷か、当て逃げか

  • いたずら傷の特徴:自動車整備の業界誌 BSRweb の解説(2026年9月)では、10円玉や鍵を押し付けてつけるため、塗装の下まで届く深い溝になり、フロントフェンダーからドア、後ろのパネルへと、複数のパネルにまたがる長い一直線の傷が多いとされています。複数のパネルに及ぶと、修理代が数十万円になることもあるとしています。
  • 保険の扱いが違います。損害保険料率算出機構の資料では、他の自動車との衝突・接触による傷は「いたずら」に含まれません。他の車が当たった傷は当て逃げとして扱われ、ソニー損保によると3等級ダウンで、事故有の期間が3年加わります。
  • どちらにあたるかは保険会社が判断します。傷の全体とアップ、止めていた場所の写真を見せて相談してください。当て逃げの対処は、交通事故・物損事故で撮る写真の「当て逃げされたとき」で解説しています。

犯人がわかったら

  • 修理代を請求できます。故意または過失で他人の権利を侵害した人は、損害を賠償する責任を負います(民法第709条)。請求できる期間は、損害と加害者を知った時から3年です(第724条)。
  • 相手が子どもの場合。責任能力のない子どもの行為は、監督義務者(親など)が賠償する責任を負う場合があります(第712条・第714条)。
  • 示談:裁判によらず、当事者が賠償の額や支払い方法などを決めて解決することです(法テラス)。示談の条件として告訴を取り消すと、同じ件で告訴し直すことはできません(刑事訴訟法第237条)。内容を決める前に、弁護士に相談すると安心です。
  • 車両保険を使った場合:保険会社は、支払った保険金の額の範囲で、犯人への請求権を引き継ぎます(保険法第25条)。免責金額など保険で補われなかった分は、自分で請求できます(SBI損保)。

自宅の駐車場で繰り返されるとき

  • 警察に相談する。愛知県警東海警察署の交番速報(2026年7月分)は、自宅の駐車場で車の車体を傷つけられた事例を挙げ、防犯カメラやセンサーライトの設置、車庫での駐車などの対策を勧め、相談は警察相談専用電話 #9110 で受け付けるとしています。パトロールの強化を求めることもできます。
  • 防犯カメラは、自分の敷地を映す範囲で。熊谷市の家庭用防犯カメラのガイドラインは、自宅の敷地内に設置し、敷地の外の不要な範囲は映さない、設置していることを表示する、映像は短期間で消去する、映像を加工しない、捜査機関の求めなどを除いて第三者に提供しない、としています。
  • 被害のたびに記録する。日時、場所、傷の位置、写真のファイル名、警察への届出を一覧にしておくと、続いていることを説明しやすくなります。

やってはいけないこと

  • 証拠もなく近所の人などを疑って問い詰める・SNS でさらす。人違いだった場合はもちろん、事実でも名誉毀損などの問題になるおそれがあります。
  • 仕返しをする。相手の物を傷つければ、あなたが器物損壊罪に問われるおそれがあります。
  • 保険会社に連絡する前に修理する。
  • 写真を加工する。見やすくするための切り取りや補正は、コピーに対して行い、元のファイルを残します。

PEA でできること・できないこと

PEA は、画像を性質の異なる8つの解析で調べ、AI による生成・加工の手がかりを1〜10のグレードで示す画像鑑定サービスです。傷がいつ・誰によってつけられたか、いたずらか当て逃げかを判断するものではありません。

まずは、費用のかからないことから。気づいた日に撮る、元のファイルを残す、警察と保険会社に連絡する。これがいちばん先にやることです。

  • 傷に気づいた日の写真が、その時点で存在したことを、第三者が照合できる形で残せます。鑑定すると、写真のファイルのハッシュ値(SHA-256)と鑑定の内容に、電子署名と第三者のタイムスタンプ(RFC 3161)が付きます。タイムスタンプの時刻は、鑑定した時点です。気づいた日に鑑定しておけば、「遅くともその日に、この写真が存在した」ことを示す材料になります。
  • 鑑定書にするのは7日以内です。無料の鑑定の結果は7日で消えます。犯人との話し合いや保険の手続きで使いそうな写真は、7日以内に鑑定書(1件¥1,000)にしてください。見せた相手は、証明書番号で照合のページから発行日時・ハッシュ値・タイムスタンプの時刻を確かめられます。
  • 全部の写真を鑑定書にする必要はありません。ナンバーが入った車の全体と、傷の全体・アップなど、1〜数枚に絞るのが現実的です。
  • 写真のファイル(JPEG・PNG・HEIC、25MB まで)が対象です。防犯カメラやドラレコの動画は鑑定できないので、元のファイルのまま保存してください。

PEA は、写真を撮った日時や撮影者、傷がいつ・誰によってつけられたか、それが犯罪にあたるかは証明できません。示せるのは、写真のファイルが鑑定の時点で存在し、以後変わっていないことと、鑑定の内容です。鑑定書のタイムスタンプは、総務大臣の認定を受けたタイムスタンプではありません。警察や保険会社がそれをどう扱うかは保証できません。写真の日付の示し方は写真の日付を証明するにはで解説しています。

よくある質問

車のいたずら傷は、警察に届けたほうがいいですか?

届けてください。三井住友海上は、いたずらやあて逃げの被害は警察への届出を勧めています。大阪府警の警察署の案内では、器物損壊の届出に、壊れた状況の写真や見積書など被害を証明する資料を持っていき、受理されると受理番号が出されます。なお、器物損壊罪は告訴がなければ起訴できない罪(親告罪)で、告訴は原則として犯人を知った日から6か月以内です。

車のいたずら傷は、車両保険で補償されますか?

多くの保険会社で、いたずら・落書きは、補償の広い「一般型」でも、範囲を限定した「エコノミー型」でも補償の対象です(東京海上日動・損保ジャパン・三井住友海上・ソニー損保・SBI損保などで確認)。ただし、他の車との衝突だけを補償するプランでは対象外になるなど、会社や契約の始期で違います。タイヤだけの損害は対象外とする会社もあります。修理の前に保険会社に連絡して確かめてください。

いたずら傷で車両保険を使うと、等級はどうなりますか?

いたずらは「1等級ダウン事故」で、翌年の等級が1つ下がり、割引の少ない「事故有」の期間が1年加わります。たとえば14等級(割引52%)で使うと、翌年は13等級・事故有(割引24%)になると SOMPOダイレクトは説明しています。修理代と、保険料が上がる分を比べて決めます。他の車と接触した傷は、いたずらではなく当て逃げとして3等級ダウンになります。

いたずら傷と当て逃げの傷は、どう違いますか?

業界誌の解説では、いたずら傷は硬貨や鍵を押し付けてつけるため、塗装の下まで届く深い溝になり、フェンダーからドア、後ろのパネルへと複数のパネルにまたがる長い一直線の傷が多いとされています。保険の約款では、他の自動車との衝突・接触による傷は「いたずら」に含まれず、当て逃げとして扱われます。どちらにあたるかは保険会社が判断するので、傷の全体とアップを撮って相談してください。

犯人がわかったら、修理代を請求できますか?

できます。故意に他人の物を壊した人は、損害を賠償する責任を負います(民法第709条)。責任能力のない子どもの場合は、監督義務者である親などに請求できる場合があります(第714条)。話し合いで賠償の額などを決める示談で解決することもありますが、示談の条件で告訴を取り消すと、同じ件で告訴し直すことはできません(刑事訴訟法第237条)。車両保険を使った場合は、保険会社が払った額の範囲で犯人への請求権を引き継ぎます。

出典