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申請の流れと、写真の役割

日本損害保険協会は、台風・大雪・地震などの自然災害で建物や家財が損傷したときの一般的な手続きを、次の流れで案内しています。

  1. 自然災害による損害が起きる
  2. 保険会社または代理店に連絡する
  3. 保険会社から請求の書類が届く
  4. 必要な書類を作って出す
  5. 支払額が決まり、保険金を受け取る

必要な書類として挙げられているのは、保険金の請求書、損害を受けた物の写真(複数枚)、修理の見積書です。同協会は、この手続きは自分で簡単に行うことができ、手数料は一切かからないとしています。

損害の調査は、保険会社が調査会社に頼むこともあり、損害額の鑑定や事故の原因の調査には、日本損害保険協会の試験に合格して登録された「損害保険登録鑑定人」があたることがあります。東京海上日動は、写真と見積書で十分に確認できれば、鑑定人が派遣されないこともあると説明しています。写真は、保険会社が損害の状況と修理の必要性を確かめるための、いちばん基本の材料です。

撮る写真(建物・被害箇所・室内・家財)

保険会社の案内をもとに、撮っておきたい写真をまとめました。求められる写真は保険会社や事故の内容によって違うので、最終的には加入している保険会社の指示に従ってください。

火災保険・地震保険の申請で撮っておきたい写真(一般論)
撮るもの撮り方根拠・メモ
建物の全景別の方向から2〜3枚。表札や屋号も写す東京海上日動の FAQ。どの建物かを示す
被害箇所を含む遠景被害箇所が建物のどこにあるかがわかるように引いて撮る東京海上日動の FAQ。三井住友海上も「周りがわかる写真」を挙げる
被害箇所のアップ同じ箇所を複数の角度から。ひび・割れ・へこみなどの大きさがわかるように東京海上日動・三井住友海上の FAQ
室内の被害部屋ごとの全体と、被害箇所の寄り雨漏りの染み、天井・壁・床の被害など
浸水の高さ浸水の跡にメジャーを当てて撮る東京海上日動の解説。内閣府も同じ撮り方を案内
家財被害箇所に加え、メーカー名・型番。まとめて撮るときは数量がわかるように三井住友海上の FAQ
地震で倒れた・散らばった物片付ける前の状態と、品目ごとの損傷三井住友海上の FAQ(地震保険)

撮り方のコツ

  • 片付け・修理の前に撮る。保険会社各社が、被害の状況は片付ける前に撮るよう呼びかけています。共同通信の報道(2026年10月16日)によると、三井住友海上は令和8年熊本地震で、調査の予約のときに室内の写真を撮るよう呼びかけ、撮影せずに壊れた家電などを捨ててしまうと、被害を確認できず保険金を支払えないこともあるとしています。
  • 「引き」と「寄り」を組み合わせる。アップだけでは、建物のどこの被害かがわかりません。全景、被害箇所の周り、アップの順に撮ると、つながりが伝わります。
  • 家の外は4方向から、家の中は部屋ごとに。内閣府の被災者向けのチラシ「家の被害状況を写真で記録しましょう」は、家の外をなるべく4方向から撮り、家の中は被災した部屋ごとの全景と被害箇所の「寄り」を撮り、被害を受けた部屋・箇所はすべて撮るよう案内しています。罹災証明書の申請にも、保険の請求にも役立つとしています。
  • 大きさを示す。メジャーや定規を当てて撮ると、ひびの長さや浸水の高さが伝わります。
  • 危ない場所には上らない。三井住友海上は、屋根など危険な場所の写真は無理をせず業者に相談するよう案内しています。写真で確認できない場合は、保険会社から連絡があるとしています。
  • 加工しない・元のファイルを残す。明るさの調整、トリミング、フィルター、文字の書き込みは避け、撮ったままのファイルを残します。保険会社は提出された画像の加工や使い回しを調べています(保険会社は画像の加工・使い回しを調べている)。
  • 多めに撮る。あとから追加の写真を求められることもあります。距離や角度を変えて、多めに残しておくと安心です。

地震保険の写真と損害の認定

地震保険は、損害の程度を全損・大半損・小半損・一部損の4つに分けて認定し、保険金額のそれぞれ100%・60%・30%・5%(いずれも時価が上限)を支払うしくみです(財務省)。

地震保険の建物の損害の認定(日本損害保険協会の認定基準から)
区分主要構造部の損害額(建物の時価に対する割合)支払われる額
全損50%以上保険金額の100%(時価が上限)
大半損40%以上50%未満保険金額の60%(同)
小半損20%以上40%未満保険金額の30%(同)
一部損3%以上20%未満保険金額の5%(同)

このほか、焼失・流失した床面積や、床上浸水などによる基準もあります。家財は、家財の損害額が時価の80%以上で全損、60%以上で大半損、30%以上で小半損、10%以上で一部損です。詳しくは日本損害保険協会の「地震保険 損害の認定基準について」をご覧ください。

  • 見られるのは、主要構造部の損害です。建物は、軸組(柱・梁)・基礎・屋根・外壁などの主要構造部の損害の程度で認定されます。外観を複数の方向から、基礎や外壁のひび、屋根の被害を、全体とアップで撮っておきます。
  • 写真と申告書で認定されることもあります。日本損害保険協会の資料(2025年5月)によると、契約者が出す申告書と写真で損害を調べる「自己申告方式」があり、適正に認定できる事案に限って使われ、写真で確認できなければ立会いの調査に切り替えます。申告と写真が合わない場合は、電話での聞き取りや追加の写真、立会いの調査で確かめたとされています。
  • 罹災証明書は必要ありません。日本損害保険協会は、地震保険の請求に罹災証明書は必要ないと案内しています。保険の損害の認定は、市町村が出す罹災証明書の判定とは別の基準で行われます。

家財の写真と購入の記録

  • 捨てる前に撮る。壊れた家電や家具は、捨てる前に、損傷の状態とメーカー名・型番が写るように撮ります。
  • 損害品の明細を書けるようにしておく。東京海上日動は、損害品明細書に、品名(メーカー・型式)、損傷の状況、購入の時期・購入先・価格を書くよう案内しています。購入時のレシート、通販の注文履歴、保証書などを探しておくと書きやすくなります。
  • 修理できない場合の書類。三井住友海上は、修理できない理由がわかる書類と、同等品を買い直す金額がわかる書類(レシートなど)を出すよう案内しています。

写真がない・撮り忘れたとき

  1. まず保険会社に連絡して、事情を伝える。写真がないからと請求をあきらめる前に、何で損害を確かめられるかを相談します。
  2. 修理業者に、修理前後の写真がないか問い合わせる。東京海上日動は、先に修理してしまった場合はこの方法を案内しています。修理した後でも請求はできますが、修理前後の写真などが必要になるとしています。
  3. ほかの書類を集める。損保ジャパンは、損害を確かめる書類として、見積書・写真・領収証・図面・被害品明細書を挙げています。家族のスマートフォンや、被害を知らせたメッセージに添えた写真が残っていないかも探してください。
  4. 訪問での確認を相談する。東京海上日動は、水災で見積書を出さなくても、訪問で被害を確認したうえで保険金を算出できる場合があるとしています。

ただし、東京海上日動は、写真がなければ支払いの対象外になるおそれがあるとも説明しています。これから片付けや修理をするなら、必ずその前に撮ってください。事故の連絡が遅れた場合は、遅れた理由を書いた書類を求められることがあります(損保ジャパン)。

写真の提出のしかた(Web・アプリ・LINE・郵送)

  • 郵送:保険会社から届く書類と返信用の封筒で出す方法です。
  • Web・アプリ・LINE:三井住友海上は契約者専用のページやアプリから、損保ジャパンは LINE から写真や動画を送れると案内しています。あいおいニッセイ同和も、Web での保険金請求を受け付けています。
  • 印刷が必要かどうかは、保険会社や手続によって違います。事故の連絡のときに、写真の出し方と枚数を確かめてください。
  • 送った後も、元のファイルを残す。アプリや LINE で送ると、画像が縮小されたり、撮影日時などの記録が消えたりすることがあります。追加の写真を求められたときや、話し合いになったときに備えて、撮ったままのファイルを端末やパソコンに残しておきます。

請求できる期間と、保険会社がわからないとき

  • 保険金を請求する権利は、3年で時効になります(保険法第95条)。いつから数えるかは保険法に定めがなく、商品ごとに違うと日本損害保険協会は説明しています。被害に気づいたら、早めに連絡するのが確実です。
  • 保険証券をなくして、どこと契約しているかわからないときは、「自然災害等損保契約照会センター」(0120-501331)に問い合わせると、契約している保険会社から連絡が来ます(共同通信の報道による)。

保険会社は画像の加工・使い回しを調べている

2026年、大手の損害保険会社が、請求に使われる画像の不正を調べるしくみを相次いで導入しました。

  • 東京海上日動(2026年9月30日の発表):火災保険の請求に出された画像を過去の請求と照らし合わせ、同じ・似た画像の使い回しを検知するしくみを2026年7月から先行して使い、9月からは生成 AI で作られた・加工された疑いのある画像の検知も始めました。最終的な判断は担当者が行うとしています。
  • 三井住友海上・あいおいニッセイ同和(2026年8月3日の発表):損害状況の写真や修理の見積書・領収書について、生成 AI による作成・加工や、改変・流用の疑いを検知するしくみを導入しました。契約者の手続きや負担は変わらないとしています。

ふつうに撮った写真をそのまま出す分には、心配はいりません。気をつけたいのは、見やすくするつもりの加工や、ほかの写真の流用です。明るさの補正や切り抜き、別の日の写真や他人の写真を使うことは避け、撮ったままのファイルを出してください。

「保険金で修理できる」と勧誘する業者に注意

「火災保険を使えば無料で修理できる」「申請を代わりにやります」と訪問やネット広告、SNS で勧誘する業者とのトラブルが続いています。

  • 相談の例:国民生活センターには、手数料が保険金の40%だった、解約を断られた、「請求の期限が迫っている」と急がされた、といった相談が寄せられています(2021年9月)。2026年3月の発表でも、件数は減ったものの、成功報酬が45%だった事例などが紹介されています。日本損害保険協会も、保険金の4割を求められた例や、成功報酬が30%だった例を挙げています。
  • 保険会社に連絡する前に、業者と契約しない。日本損害保険協会は、先に業者と契約すると、保険金が出ずに修理代が自己負担になったり、高額な解約手数料を求められたりするおそれがあるとしています。
  • うその理由での請求に加わらない。消費者庁は、経年劣化と知りながら災害による損害と偽って請求すると、保険金の返還を求められたり、契約を解除されたり、詐欺罪に問われたりすることがあると注意しています。日本損害保険協会も、うその理由での請求は詐欺にあたるおそれがあり、知らないうちに加担してしまう危険があると呼びかけています。
  • 業者が撮った写真だけに頼らない。被害の写真は、できるだけ自分でも撮り、元のファイルを手元に残しておきます。

写真の日付を示すには

保険の請求では、「その傷は今回の災害によるものか、前からあったものか」が問題になることがあります。スマートフォンの写真の撮影日時は、端末の時計にもとづく記録で、後から変えることもできるため、それだけでは強い根拠になりません。

  • その日のうちに保険会社に送る・連絡する。相手の側に、受け取った日時の記録が残ります。元のファイルは手元に残してください。
  • 第三者のタイムスタンプで固定する。RFC 3161 のタイムスタンプを付けると、「遅くともその時点でファイルが存在し、以後変わっていない」ことを示せます。撮影した日時や、被害がいつ起きたかを示すものではありません。

「遅くとも」と「早くとも」の考え方は、写真の日付を証明するにはで詳しく解説しています。被災した家の写真を罹災証明書の申請に使う場合は、罹災証明書の写真の撮り方もご覧ください。

相談先

  • 加入している保険会社・代理店:事故の連絡、必要な写真と書類、提出のしかたは、まずここで確かめます。
  • そんぽADRセンター(日本損害保険協会):損害保険に関する相談に、原則無料で応じています。電話 03-4332-5241(月〜金曜 9時15分〜17時。祝日・休日と年末年始を除く)。保険会社との話し合いがまとまらないときの紛争解決の手続もあります。
  • 消費者ホットライン「188(いやや!)」:申請サポート業者や修理業者とのトラブルは、最寄りの消費生活センターに相談できます。
  • 自然災害等損保契約照会センター(0120-501331):保険証券をなくして、契約している保険会社がわからないとき。

PEA でできること・できないこと

PEA は、画像を性質の異なる8つの解析で調べ、AI による生成・加工の手がかりを1〜10のグレードで示す画像鑑定サービスです。保険金が支払われるか、被害がいつ・何によって起きたかを判断するものではありません。

まずは、費用のかからないことから。片付けや修理の前に撮る、元のファイルを残す、保険会社に連絡する。これがいちばん先にやることで、保険の請求のために PEA を使う必要はありません。

  • 片付けや修理の前の写真が、その時点で存在したことを、第三者が照合できる形で残せます。鑑定すると、写真のファイルのハッシュ値(SHA-256)と鑑定の内容に、電子署名と第三者のタイムスタンプ(RFC 3161)が付きます。タイムスタンプの時刻は、鑑定した時点です。被害の当日や修理の前に鑑定しておけば、「遅くともその日に、この写真が存在した」ことを示す材料になります。
  • 鑑定書にするのは7日以内です。無料の鑑定の結果は7日で消えます。後で話し合いになりそうな写真は、7日以内に鑑定書(1件¥1,000)にしてください。見せた相手は、証明書番号で照合のページから発行日時・ハッシュ値・タイムスタンプの時刻を確かめられます。
  • 全部の写真を鑑定書にする必要はありません。建物の全景と、争いになりそうな被害箇所のアップなど、1〜数枚に絞るのが現実的です。
  • 写真のファイル(JPEG・PNG・HEIC、25MB まで)が対象です。動画は鑑定できないので、元のファイルのまま保存してください。

PEA は、写真を撮った日時や撮影者、写っている建物が契約した建物か、被害がいつ・何によって起きたか、保険金が支払われるかは証明できません。示せるのは、写真のファイルが鑑定の時点で存在し、以後変わっていないことと、鑑定の内容です。鑑定書のタイムスタンプは、総務大臣の認定を受けたタイムスタンプではありません。保険会社が鑑定書をどう扱うかも保証できません。保険会社に出す写真は、撮ったままの元のファイルを使ってください。

よくある質問

火災保険の申請には、どんな写真が必要ですか?

保険会社によって違いますが、東京海上日動は建物の全景を別の方向から2〜3枚(表札や屋号も)、被害箇所を含む遠景、被害箇所を複数の角度から撮った写真を挙げています。三井住友海上も、損害箇所のアップ、周りがわかる写真、建物全体の写真を挙げています。家財は、メーカー名・型番と数量がわかるように撮ります。どれも、片付けや修理の前に撮るのが基本です。詳しくは加入している保険会社の案内を確かめてください。

火災保険の写真がない・撮り忘れた場合はどうすればいいですか?

まず保険会社に連絡して、事情を伝えてください。先に修理してしまった場合は、修理業者が修理前後の写真を撮っていないか問い合わせる、と東京海上日動は案内しています。見積書・領収証・図面なども損害を確かめる書類になります。ただし、写真がないと支払いの対象外になるおそれがあるとも説明されています。これから片付けや修理をするなら、その前に撮ってください。

火災保険の写真は、どうやって提出しますか?印刷は必要ですか?

郵送のほか、Web・アプリ・LINE で写真を送れる保険会社が増えています。たとえば三井住友海上は契約者専用ページやアプリ、損保ジャパンは LINE、あいおいニッセイ同和は Web での請求を案内しています。印刷が必要かどうかは保険会社や手続によって違うため、事故の連絡のときに確かめてください。

地震保険の申請では、写真をどう撮ればいいですか?

地震保険の建物の損害は、基礎・柱・外壁・屋根などの主要構造部の損害の程度で、全損・大半損・小半損・一部損に分けて認定されます。外観を複数の方向から、基礎や外壁のひび、屋根の被害を、全体とアップで撮ります。家財は、倒れたり散らばったりした状態を片付ける前に撮り、品目ごとの損傷も撮ります。日本損害保険協会によると、地震保険の請求に罹災証明書は必要ありません。

「保険金で無料で修理できる」という業者に申請を頼んでも大丈夫ですか?

注意が必要です。日本損害保険協会は、保険金の請求は自分ででき、手数料はかからないと案内しています。国民生活センターには、手数料が保険金の40〜45%だった、解約を断られた、といった相談が寄せられています。経年劣化と知りながら災害による損害と偽って請求すると、詐欺罪に問われることがあると消費者庁も注意しています。業者と契約する前に、まず保険会社に連絡してください。

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