実際に出回ったフェイク画像・動画(事例)

報道とファクトチェック団体の記事で確認できた主な例です(人名は載せていません)。

災害・クマ出没で出回った主なフェイク画像・動画
時期出来事何だったかその後
2016年4月熊本地震「動物園からライオンが逃げた」海外の写真を使った投稿。動植物園に100件を超える問い合わせ投稿者は偽計業務妨害の疑いで逮捕、のちに起訴猶予(不起訴)
2022年9月台風15号「ドローンで撮影した静岡の水害」画像生成 AI(Stable Diffusion)で作った画像3枚静岡県が「今回の大雨被害ではない」と否定。投稿者が AI 生成と認めた
2024年1月能登半島地震の「津波」「隆起した消波ブロック」2011年の東日本大震災の映像や、2020年の別の場所の写真の使い回し日本ファクトチェックセンターが画像検索で元を特定
2024年1月能登半島地震の偽の救助要請倒壊家屋に家族が挟まれたとする虚偽の投稿投稿者は偽計業務妨害の疑いで逮捕、略式命令で罰金20万円
2025年10月「クマが柴犬をくわえて逃走」などのクマの動画動画生成 AI で作った動画。AI の透かしやラベルが付いたものも約130万回表示された動画に、X のコミュニティノートが付いた
2025年11月宮城県女川町の「クマの目撃」画像生成 AI で作った画像。いたずらで送った画像を信じた人が町に通報町が公式 X で注意喚起したあと、「生成 AI によるフェイク画像」と訂正しておわび
2026年7〜8月令和8年熊本地震能登半島地震のときの別の施設の映像の使い回し。被災者の写真を AI で加工した画像も拡散総務省が「その画像は本物?」と注意を呼びかけ、SNS 各社に対応を要請
2026年8月鳥取・大山の「クマがパンを食べる」動画AI で作った動画(生成アプリの表示あり)知事が否定し、県が削除要請の方針を示した

災害時には、偽の救助要請や偽の寄付募集、根拠のない犯罪の噂も広がります。能登半島地震では、発災後24時間の救助要請の投稿のうち、約1割がデマと推定されたという分析もあります(総務省の情報通信白書。推定であり、誤りを含む可能性があると注記されています)。

フェイク画像の3つのタイプ

  1. AI で作った画像・動画:実在しない場面を、画像や動画を生成する AI で作ったもの。静岡の水害やクマの動画がこれにあたります。
  2. 過去・別の場所の写真や映像の使い回し:本物の写真ですが、今回の出来事とは関係がないもの。能登半島地震や令和8年熊本地震で多く見られました。
  3. 本物の写真の加工:報道写真などの一部を書き換えたもの。被災者の写真を AI で加工して拡散した例があります。

AI の手がかりを探すだけでは、②の使い回しは見抜けません。次の4つの確認を、どれか一つではなく組み合わせて使ってください。

シェアする前の4つの確認

日本ファクトチェックセンターの検証の手順と、政府広報オンラインの案内をもとにしています。

① 発信元を見る

  • 投稿したのは誰か。自治体・報道機関・現地の当事者か、それとも転載しているだけか。
  • その人は普段どんな投稿をしているか。最近作られたアカウントや、注目を集める投稿ばかりのアカウントには注意します。
  • 「拡散希望」と書かれていても、まず元の情報源を確かめます。

② 画像検索で元の画像を探す

使い回しを見抜くには、画像検索がもっとも有効です。

  • Google レンズ:写真の部分だけを範囲指定して検索すると、見つかりやすくなります。
  • TinEye:検索結果を古い順に並べ替えると、今回の出来事より前に同じ画像が公開されていないかがわかります。
  • 動画:ファクトチェッカーが使う InVID-WeVerify などの道具で、動画の一場面を切り出して画像検索できます。同じ映像が出来事より前に公開されていれば、使い回しです。

同じ画像が見つからないことも手がかりになります。静岡の水害の AI 画像は、画像検索で同じ画像が見つからないことが疑われた理由の一つでした。詳しい使い方はマッチングアプリの写真はAI?画像検索で出てこないプロフィール写真の見分け方でも解説しています。

③ 自治体・報道の発表を確かめる

被害の様子やクマの出没は、自治体、警察、気象庁などの公式の発表や、報道で確かめます。女川町の件のように、自治体の発表でも後から訂正されることがあります。訂正やおわびが出ていないかも見ておきましょう。

④ 疑問の声やコミュニティノートを見る

投稿への返信や引用に、「AI で作られている」「別の災害の写真だ」といった指摘がないかを見ます。X では、利用者が背景情報を書き、立場の違う評価者が役に立つと評価した「コミュニティノート」が表示されることがあります。

判断できない情報は、投稿・拡散しないのがいちばん安全です。政府広報オンラインも、「情報源はある?」「その画像は本物?」などを確かめ、判断できないものは拡散しないよう呼びかけています。

AI で作った画像・動画の手がかり

AI で作った画像・動画を疑う手がかり(日本ファクトチェックセンターの解説などから)
見るところ手がかりの例
透かし・ラベル動画生成 AI の透かし、「クリエイターが AI 生成のラベルを付けました」(TikTok)、「改変または合成されたコンテンツ」(YouTube)、「AI 情報」(Meta)などの表示
文字看板や標識の文字が崩れている・読めない
影と地形影の向きと建物・地形が対応していない
あるはずのもの災害の写真なのに電柱・車・人影・流れてきた物がない
動き(動画)物や人が急に現れる・消える、形が変わる
画像の形と画質正方形で画質が粗い(静岡の水害の AI 画像で指摘された点)

スマートフォンの小さな画面では、これらの手がかりは見落としやすくなります。気になる画像は拡大して確かめてください。透かしやラベルがないからといって本物とは限りません。切り取りや再投稿で消えることがあります。

クマ出没の画像・動画で見るところ

2025年以降、クマの出没が相次ぐなかで、AI で作ったクマの画像・動画が多く出回りました。次の点を確かめてください。

  • クマの見た目:宮城の「クマが柴犬を襲った」とされた動画は、映っているクマにツキノワグマ特有の胸の白い模様がないことなどから AI 生成と指摘されました。本州にいるのはツキノワグマ、北海道はヒグマです。
  • 透かしと表示:動画生成 AI の透かしや、「AI 生成」のラベルが付いていることがあります。
  • 場所:町名や施設が書かれていれば、その自治体の出没情報や報道を確かめます。

読売新聞が TikTok の「クマ」の動画を調べたところ、多くが偽物だったと AFP が報じています。クマの目撃は命に関わる情報だからこそ、自治体の発表で確かめてから共有してください。

AI 判定ツールの結果だけで決めない

自動で完璧に見分ける道具は、まだありません(日本ファクトチェックセンター)。女川町の件では、職員が複数の AI 判定アプリで確かめたところ、結果が食い違ったと報じられています。AI チャットに「本物か」と聞いても、本物の動画を AI 生成と答えるなど、答えがばらばらだった例があります。

判定ツールの結果は「手がかりの一つ」として扱い、①〜④の確認と組み合わせてください。とくに、SNS で再圧縮された画像や動画の一場面を切り出した画像は、残っている情報が少なく、どの道具でも判断が難しくなります。

フェイク画像の投稿・拡散は罪になる?

政府広報オンラインは、偽・誤情報の投稿や拡散で、偽計業務妨害や詐欺の罪、損害賠償を問われる場合があると案内しています。

  • 偽計業務妨害罪(刑法233条):虚偽の風説を流したり偽計を用いたりして業務を妨害すると、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。熊本地震のライオンの件(逮捕のあと起訴猶予)や、能登半島地震の偽の救助要請(略式命令で罰金20万円)で、この罪が問われました。
  • 軽犯罪法(1条16号):虚構の犯罪や災害の事実を公務員に申し出ると、拘留または科料の対象です。

女川町の件について、弁護士は「AI で作って発信しただけで直ちに犯罪になるわけではないが、現実に悪影響が生じ、虚偽だと認識していれば罪に問われ得る」との見解を示しています。冗談のつもりでも、災害時には警察や自治体の業務を止め、本当に助けが必要な人に影響します。

うっかりシェアしてしまったら

  1. 投稿やリポストを削除する
  2. フォロワーに向けて、誤りだったことを短く伝える(削除だけでは、すでに見た人に伝わらない)
  3. 元の投稿を、サービスの報告の機能で報告する

自治体や報道の訂正が出ている場合は、それを引用して伝えると、誤りが広がるのを止めやすくなります。

PEA でできること・できないこと

  • 画像の AI による生成・加工の手がかりの鑑定:PEA の鑑定は、性質の異なる複数の解析の結果から 1〜10 のグレードと判定の要約を示します。初回は登録なしで試せます(英語の画面はこちら)。
  • 判断の材料が足りない画像は「判定外」になります。動画を一時停止して保存した画像や、画面を撮り直した写真、強く圧縮された画像は、無理に白黒をつけません。動画そのものの鑑定にはまだ対応していません。
  • 使い回しの写真は、画像の解析だけでは見抜けません。本物の写真を別の出来事に使っている場合は、②の画像検索と③の発表の確認が決め手です。

画像が加工されているかの一般的な調べ方は写真・画像が加工されているか調べる方法で、AI 画像の見分け方はAI画像の見分け方で、捏造画像が問題になった裁判と事件は捏造画像・AI画像が問題になった日本の裁判と事件で解説しています。

自宅が被災したときに、罹災証明書の申請や保険の請求のために被害を写真に残す方法は、罹災証明書の写真の撮り方と火災保険・地震保険の写真の撮り方で解説しています。

よくある質問

クマ出没のAI画像・動画はどう見分けますか?

動画生成AIの透かしやAI生成のラベル、崩れた看板の文字、物が急に現れたり消えたりする動きが手がかりです。宮城の「クマが柴犬を襲った」とされた動画は、ツキノワグマ特有の胸の白い模様がないことなどからAI生成と指摘されました。いちばん確実なのは、自治体の出没情報や報道で確かめることです。

災害のときのフェイク画像には、どんな種類がありますか?

AIで作った画像・動画、過去や別の場所の写真・映像の使い回し、本物の写真の加工の3つがあります。能登半島地震や令和8年熊本地震では、東日本大震災の映像や、能登のときの別の施設の映像が使い回されました。使い回しはAIの手がかりでは見抜けないので、画像検索で元の画像を探すことが大切です。

画像検索で元の画像を探すには?

Googleレンズで写真の部分だけを範囲指定して検索すると見つかりやすくなります。TinEyeでは検索結果を古い順に並べ替えると、今回の出来事より前に同じ画像が公開されていないかがわかります。動画は、InVID-WeVerifyなどで一場面を切り出して検索できます。

フェイク画像をシェアすると罪になりますか?

偽の情報を投稿・拡散して業務を妨害すると、偽計業務妨害罪(3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)に問われることがあり、損害賠償を求められる場合もあります。熊本地震のライオンの投稿者は逮捕され(のちに起訴猶予)、能登半島地震の偽の救助要請の投稿者は罰金20万円の略式命令を受けました。判断できない情報は拡散しないでください。

AI判定ツールで調べれば確実ですか?

確実ではありません。日本ファクトチェックセンターは、自動で完璧に見分ける道具はまだないとしています。女川町の件では、複数のAI判定アプリの結果が食い違ったと報じられています。判定ツールの結果は手がかりの一つとして、発信元・画像検索・発表の確認と組み合わせてください。

出典