この記事は、2026年10月時点の法令・判例と、法テラス・裁判所の案内をもとにした一般的な情報で、法的な助言ではありません。個別の事情は、法テラスや弁護士に相談してください。
婚約はいつ成立するか
法テラスは、婚約は両者の合意ができたときに成立すると説明しています。最高裁判所(1963年〔昭和38年〕9月5日判決)も、真実夫婦として共同生活を営む意思で結婚を約束していた事案で、両親や兄弟に打ち明けず、結納を交わしたり同棲したりしていなかったとしても、婚約(婚姻予約)が成立したと認めた判断を支持しています。
つまり、形式がなくても婚約は成立しえます。ただし、相手が「結婚の約束はしていない」と争えば、約束があったことを示す材料が必要になります。なお、この判決は、関係が長く続いていたなどの事情を前提にした、事例ごとの判断です。
正当な理由のない婚約破棄と慰謝料
法テラスは、正当な理由なく婚約を破棄すると、損害賠償責任を負うことがあると説明しています。最高裁判所(1963年〔昭和38年〕12月20日判決)も、正当な理由がなく結婚を拒んだときは、婚約の不履行による慰謝料を請求できるとしています。
法テラスは、正当な理由にあたる例として、給料の額や借金などについて無視できないようなうそをついていた場合を挙げています。ほかにどんな理由が正当とされるかは、事情によって判断が分かれるので、弁護士に相談してください。
婚約していたことを示す手がかり
婚約を示す証拠を一覧にした公的な案内は見つかりませんでした。最高裁判所は、結納を「婚約の成立を確証し」る一種の贈与とした判断を正当としています。東京家庭裁判所の調停の案内も、提出する資料の例として、手紙やスマートフォンの画面を挙げています。次のようなものが、結婚の約束を示す手がかりになりえます。
| 種類 | 例 | 残し方 |
|---|---|---|
| 約束のやり取り | 「結婚しよう」「いつ入籍する」など、結婚を前提にした LINE・メール・手紙 | トークを消さず、日時と相手のアカウントがわかる画面全体を残す |
| 形のあるもの | 婚約指輪、結納、結婚を前提にした贈り物 | 購入の記録・領収書・写真を残す |
| 周りへの紹介 | 両親への挨拶、顔合わせの食事、友人や職場への報告 | 日時・場所・同席した人をメモに残す。写真があれば残す |
| 結婚の準備 | 式場の予約、新居の契約、退職や転居の準備 | 契約書・予約の確認メール・支払いの記録を残す |
LINE・メッセージの残し方
- 結婚の約束や準備についてのトークを消さずに残し、トーク履歴のバックアップもとっておきます。
- スクリーンショットは、相手の名前(アカウント)と日時がわかるように、前後のやり取りも含めて画面全体を撮ります。
- スクリーンショットは「作り物だ」と言われることがあります(LINEトークの偽造の見分け方)。撮った日のうちにファイルを第三者が確かめられる形にしておくと、反論の材料になります。
- 相手を責める長文や、相手の職場・家族に知らせると伝えるような書き方は避け、事実を落ち着いて残しましょう。
慰謝料を求める手順
- 証拠をそろえる:上の表の記録と、婚約を破棄されたいきさつ(いつ、どんな理由を告げられたか)を時系列でまとめます。
- 話し合い・書面での請求:相手に請求の内容を伝えます。記録に残る形で求めるなら、内容証明郵便も使えます。
- 家庭裁判所の調停:東京家庭裁判所の案内では、婚約・婚姻関係・内縁関係の解消の後に、慰謝料について家庭裁判所の調停で話し合えるとしています。申立先は相手の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意した家庭裁判所で、費用は収入印紙1,200円分と郵便切手です(切手の額は裁判所ごとに違います)。
- 訴訟:話し合いで解決しないときは、損害賠償を求める訴えも考えられます。手続の選び方は弁護士に相談してください。
請求できる期間(時効)
婚約破棄の責任は、契約の不履行(債務不履行)と、不法行為のどちらとしても問題になりえます。判例にも両方の考え方があり、どちらで請求するかで期間が違います。
| 考え方 | 期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 不法行為による損害賠償 | 損害と加害者を知った時から3年(不法行為の時から20年) | 民法第724条・第709条・第710条 |
| 債務不履行による損害賠償 | 請求できることを知った時から5年(請求できる時から10年) | 民法第166条第1項・第415条 |
どちらが当てはまるかは事情によるので、短いほうの3年を目安に、早めに相談しましょう。
同棲が長いとき(内縁)
婚姻届を出していなくても、夫婦として共同生活をしていた場合は「内縁」として扱われることがあります。最高裁判所(1958年〔昭和33年〕4月11日判決)は、内縁を婚姻に準ずる関係とし、不当に破棄された側は損害賠償を求められるとしています。法テラスは、内縁の夫婦は法律上の夫婦とほぼ同じ権利義務を持ち、財産分与や慰謝料の請求も認められる(ただし相続人にはならない)とし、内縁かどうかは同居の期間や挙式などの事情から判断されるとしています。
PEA でできること・できないこと
| できること | できないこと |
|---|---|
| 結婚の約束のやり取りのスクリーンショットに、鑑定した時点で電子署名と外部の時刻認証局のタイムスタンプを付ける | 婚約が成立していたことや、破棄が不当だったことの証明 |
| 鑑定書の証明書番号から、相手や弁護士が「鑑定した時点で存在し、以後変わっていないこと」を確かめられる | スクリーンショットに写ったやり取りが実際にあったことの証明 |
| AI による生成・加工の手がかりの有無を調べ、日時などの表示が写っているかを示す | 裁判で証拠として採用されることの保証 |
無料の鑑定は1日1件まで(登録なしで1回お試しできます)。撮った日に鑑定しておけば、鑑定書にするかは7日以内に決められます。鑑定書は1件¥1,000です。無料で鑑定する
浮気の証拠の残し方はLINE の浮気の証拠もあわせてご覧ください。
よくある質問
結納や指輪がなくても、婚約は成立しますか?
成立しえます。法テラスは、婚約は両者の合意ができたときに成立すると説明しています。最高裁判所(1963年9月5日判決)も、真実夫婦として生活する意思で結婚を約束していた事案で、結納や同棲がなくても婚約の成立を認めた判断を支持しました。ただし相手が争えば、結婚の約束があったことを示す材料が必要です。
LINE のやり取りは、婚約の証拠になりますか?
婚約を示す証拠を一覧にした公的な案内はありませんが、東京家庭裁判所の調停の案内は、提出する資料の例として手紙やスマートフォンの画面を挙げています。「結婚しよう」「いつ入籍する」など結婚を前提にしたやり取りは、指輪・結納・両親への挨拶・式場の予約の記録と合わせると、約束を示す手がかりになりえます。トークは消さずに残しましょう。
婚約を破棄されたら、慰謝料はもらえますか?
正当な理由なく婚約を破棄すると、損害賠償責任を負うことがあります(法テラス)。最高裁判所(1963年12月20日判決)も、正当な理由なく結婚を拒んだときは慰謝料を請求できるとしています。法テラスは、正当な理由の例として、給料や借金などについて無視できないうそをついていた場合を挙げています。
婚約破棄の慰謝料は、いつまで請求できますか?
不法行為として請求するなら損害と加害者を知った時から3年(民法第724条)、債務不履行として請求するなら請求できることを知った時から5年(民法第166条第1項)です。判例にも両方の考え方があるので、短いほうの3年を目安に、早めに法テラスや弁護士に相談してください。
長く同棲していた場合も、婚約破棄と同じですか?
夫婦として共同生活をしていた場合は「内縁」として扱われることがあります。最高裁判所は内縁を婚姻に準ずる関係としており、法テラスは、内縁の夫婦は法律上の夫婦とほぼ同じ権利義務を持ち、財産分与や慰謝料の請求も認められるとしています。内縁かどうかは、同居の期間や挙式などの事情から判断されます。
出典
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年9月5日判決(昭和37(オ)1200、民集17巻8号942頁)
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年12月20日判決(昭和38(オ)334、民集17巻12号1708頁)
- 最高裁判所 昭和39年9月4日判決(昭和38(オ)1124、民集18巻7号1394頁)
- 最高裁判所 昭和33年4月11日判決(昭和32(オ)21、民集12巻5号789頁)
- e-Gov 法令検索: 民法 第166条・第415条・第709条・第710条・第724条
- 法テラス: 婚約とは何ですか。(よくある相談)
- 法テラス: 婚約を解消する場合には、相手方に賠償をしなければなりませんか。(よくある相談)
- 法テラス: 内縁とは何ですか?(よくある相談)
- 法テラス: 内縁の夫婦にはどのような権利・義務がありますか?(よくある相談)
- 東京家庭裁判所: 慰謝料請求調停を申し立てる方へ(PDF)
- 裁判所: 慰謝料請求調停
- 法テラス: お電話でのお問合せ(法テラス・サポートダイヤル)