この記事は、2026年10月時点の法令と公的機関の案内をもとにした一般的な情報で、法的な助言ではありません。個別の事情は、法テラスや弁護士・司法書士に相談してください。
借用書がなくても、貸し借りの約束は成立する
民法は、金銭の貸し借り(消費貸借)は、返す約束をして相手からお金を受け取ることで効力が生じると定めています(第587条)。法テラスも、借用書を作らずに友人にお金を貸した場合でも、契約は成立し、有効だと説明しています。
書面で約束する貸し借りの定めもあります(第587条の2)。借用書は「契約を成り立たせるため」というより、あとで約束の内容を示すために大切なものです。
「貸した」と示すために必要なこと
相手が返さないときに、裁判所の手続を使って返してもらうには、貸した側が、お金を渡したことと、相手が返すことに合意したことの両方を示す必要があります(法テラス)。どちらか一方だけでは足りません。
- 振込の記録はあっても、返す約束の記録がなければ、相手から「もらったお金だ」と言われるおそれがあります。
- 「貸して」「返す」というやり取りはあっても、実際にお金を渡した記録がなければ、渡したこと自体を争われるおそれがあります。
証拠になりうるもの
法テラスは、借用書がなくても、その場にいた知人の証言やメールなどで、契約の成立を証明できる場合があるとしています。裁判所の簡易裁判所の案内も、契約書・領収書・覚書などの書類と、証人や本人の話を、主な証拠として挙げています。
| 示したいこと | 手がかりになりうるもの | 残し方 |
|---|---|---|
| お金を渡したこと | 振込・送金の記録、ATM の明細、現金を渡したときの受取りのメモ、その場にいた人 | 通帳・利用明細はそのまま保管し、画面の記録は画面全体を保存する |
| 返す約束をしたこと | 「貸して」「いつまでに返す」などのメール・LINE、覚書・念書、返済の予定を書いたメモ | トークを消さず、日時と相手のアカウントがわかる形で残す |
| 返している途中であること | 一部の返済の振込の記録、「今月は少し待って」などのメッセージ | 返済のたびに記録を残す |
なお、公的機関の案内で LINE や振込の記録を名指ししたものは見つかりませんでした。ここに挙げたものは、ほかの記録と合わせて評価される「手がかり」です。どれが十分かは事情によって違うので、相談先で確かめてください。
今からできること
① LINE・メールのやり取りを残す
- 貸し借りについてのトークを、消さずに残します。機種変更などで消えないよう、トーク履歴のバックアップもとっておきます。
- スクリーンショットは、相手の名前(アカウント)と日時がわかるように、前後のやり取りも含めて画面全体を撮ります。
- 振込の記録は、通帳や銀行のアプリの明細を保管します。アプリの画面を残すときも、日時・金額・振込先がわかる画面全体を保存します。
② 返す予定を確かめるメッセージを送る
今からでも、貸したお金の額と、いつまでに返してもらえるかを確かめるメッセージを送り、相手の返事を残しておくと、返す約束の手がかりになります。相手が応じれば、覚書や借用書を作ってもらうのも方法です。民法は、権利の承認があったときは、時効が新たに進み始めると定めています(第152条)。
脅すような言い方や、相手の職場・家族に知らせると伝えるような書き方は避け、事実と金額、返してほしい時期を落ち着いて書きましょう。
③ スクショを「後から作った」と言われないように
LINE のスクリーンショットは、見た目を似せた画像を作ることもできるため、「作り物だ」と言われることがあります(LINEトークの偽造の見分け方)。トークそのものを消さずに残すこと、画面全体を撮ること、撮った日のうちにファイルを第三者が確かめられる形で固定することが、反論の材料になります。
返してもらうための手順
- 返済期限を決めていなかったとき:貸した側は、相当の期間を定めて返すよう求めることができます(民法第591条第1項)。法テラスは、相当の期間の目安を10日〜2週間程度としています。
- 書面で請求する:内容証明郵便は、いつ、どんな内容の文書を、誰から誰あてに出したかを日本郵便が証明する制度です(内容が正しいことまでは証明しません)。請求(催告)をすると、その時から6か月の間は時効が完成しません(民法第150条第1項)。
- 少額訴訟:60万円以下の金銭の支払いを求めるときに使える、簡易裁判所の手続です(民事訴訟法第368条)。同じ簡易裁判所で使えるのは年10回までで、証拠はその日にすぐ調べられるものに限られます。
- 支払督促:相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立て、支払いを命じてもらう手続です(民事訴訟法第382条・第383条)。相手が異議を申し立てると、訴えを起こしたものとみなされ、訴訟に移ります(第395条)。
2026年5月21日からは、これらの手続もオンラインで申し立てられるようになりました(弁護士などの代理人はオンラインが義務)。手続の選び方は、法テラスや裁判所の窓口で確かめてください。
請求できる期間(時効)
| 貸した時期 | 期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2020年4月1日以後 | 返してもらえると知った時から5年、または返してもらえる時から10年の、早いほう | 民法第166条第1項 |
| 2020年3月31日まで | 改正前の民法が適用され、個人の間の貸し借りは10年(借りた人が商人なら5年) | 民法改正法(平成29年法律第44号)附則第10条、法テラス |
- 時効の期間が過ぎても、相手が時効を主張(援用)するまでは、借りたお金が自動的に消えるわけではありません(法テラス)。
- 一部でも返してもらうと、時効は新たに進み始めます(法テラス)。
- 訴えを起こしたり支払督促を申し立てたりすると、手続が終わるまで時効は完成しません(民法第147条)。
親子・家族の間の貸し借り
家族の間のお金のやり取りは、貸し借りか、あげたもの(贈与)かが、あとで問題になりやすいものです。国税庁は、親から金銭を借りた場合、返済の能力や状況などからみて本当に貸し借りと認められるときは贈与にならないとする一方、「ある時払いの催促なし」「出世払い」のような場合は、借りたお金そのものが贈与として扱われると説明しています。家族の間でも、金額・返済の予定を書いた記録と、返済の記録を残しておくと安心です。
PEA でできること・できないこと
| できること | できないこと |
|---|---|
| LINE や振込の画面のスクリーンショットに、鑑定した時点で電子署名と外部の時刻認証局のタイムスタンプを付ける | お金を貸したことや、返す約束があったことの証明 |
| 鑑定書の証明書番号から、相手や弁護士が「鑑定した時点で存在し、以後変わっていないこと」を確かめられる | スクリーンショットに写ったやり取りが実際にあったことの証明 |
| AI による生成・加工の手がかりの有無を調べ、画面のスクリーンショットかどうかや、日時などの表示が写っているかを示す | 裁判で証拠として採用されることの保証 |
無料の鑑定は1日1件まで(登録なしで1回お試しできます)。撮った日に鑑定しておけば、鑑定書にするかは7日以内に決められます。鑑定書は1件¥1,000です。無料で鑑定する
スクリーンショットを証拠として残す方法はスクショは証拠になる?もあわせてご覧ください。
よくある質問
借用書がなくても、貸したお金を返してもらえますか?
借用書がなくても、お金の貸し借りの約束は成立します(民法第587条。法テラスも、借用書を作らずに友人にお金を貸した場合でも契約は成立し有効と説明しています)。ただし相手が争う場合は、お金を渡したことと、返す約束をしたことを、貸した側が示す必要があります。振込の記録や、LINE・メールのやり取りを消さずに残しておきましょう。
LINE のやり取りだけで、貸したことの証拠になりますか?
法テラスは、借用書がなくても、その場にいた知人の証言やメールなどで契約の成立を証明できる場合があるとしています。LINE のやり取りも、返す約束を示す手がかりになりえますが、お金を渡した記録(振込の記録など)と合わせて示すのが基本です。トークは消さずに残し、スクリーンショットは相手のアカウントと日時がわかる画面全体を撮りましょう。
返済期限を決めずに貸した場合は、いつ返してもらえますか?
返す時期を決めていなかったときは、貸した側が相当の期間を定めて返すよう求めることができます(民法第591条第1項)。法テラスは、相当の期間の目安を10日〜2週間程度としています。請求した日と内容がわかるよう、内容証明郵便などの書面で求めると確実です。
何年前に貸したお金まで請求できますか?
2020年4月1日以後の貸し借りは、返してもらえると知った時から5年、または返してもらえる時から10年の早いほうで時効にかかります(民法第166条第1項)。それより前の個人間の貸し借りは、改正前の民法で10年です。時効は相手が主張(援用)して初めて効果が生じ、一部でも返してもらうと新たに進み始めます(法テラス)。
相手が「もらったお金だ」と言ってきたら?
裁判所の手続で返してもらうには、貸した側が、お金を渡したことと、相手が返すことに合意したことの両方を示す必要があります(法テラス)。返す約束がわかるメッセージや覚書、一部の返済の記録などをそろえ、法テラスや弁護士・司法書士に相談してください。家族の間では、国税庁も、本当に貸し借りと認められるかを返済の状況などから判断するとしています。
出典
- e-Gov 法令検索: 民法(明治二十九年法律第八十九号)第147条・第150条・第152条・第166条・第587条・第587条の2・第591条、民法の一部を改正する法律(平成二十九年法律第四十四号)附則第10条
- e-Gov 法令検索: 民事訴訟法 第368条・第382条・第383条・第395条
- 法務省: 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について
- 法テラス: 借用書を作らずに、友人にお金を貸しました。このような契約は無効ですか。(よくある相談)
- 法テラス: 借用書に返済期日が明記されていない場合、いつまでに返済すればいいのですか。(よくある相談)
- 法テラス: 身近なトラブル Q&A(2020年10月作成、PDF)
- 法テラス: 債務、貸付(やさしい日本語)
- 裁判所: 裁判手続 簡易裁判所の民事事件Q&A
- 裁判所: 少額訴訟
- 裁判所: 支払督促
- 裁判所: 説明・記載例(訴状(少額訴訟・貸金))(PDF)
- 国税庁: No.4420 親から金銭を借りた場合
- 日本郵便: 内容証明