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撮る前に:安全が先

  • 傾いた家、崩れそうな壁や屋根、浸水した家の中には、無理に入らないでください。余震や二次災害のおそれがあります。
  • 屋根や高い場所には上らない。撮れない場所は、撮れる範囲で構いません。調査の担当者に伝えてください。
  • 撮れなくても、申請はできます。写真は判定を早めるための材料で、内閣府は、自己判定方式以外では写真を必須にしないよう自治体に求めています。

罹災証明書とは、何に使うか

罹災証明書は、災害で受けた住まいの被害の程度を、市町村が調べて証明する書類です。災害対策基本法第90条の2は、市町村長は、被災者から申請があったときは、遅滞なく、住家の被害の状況を調査し、罹災証明書を交付しなければならないと定めています。交付の細かな手続は、市町村ごとに決められています。

内閣府によると、罹災証明書は、被災者への次のような支援を受けるときの判断材料として使われます。

  • 給付:被災者生活再建支援金、義援金
  • 融資:住宅金融支援機構の融資、災害援護資金
  • 減免・猶予:税、保険料、公共料金
  • 現物の支援:応急仮設住宅、住宅の応急修理

内閣府のリーフレット(令和8年6月)によると、被災者生活再建支援金の基礎支援金は災害から13か月以内、加算支援金は37か月以内に申請します。

撮る場所と枚数(一覧)

内閣府は、被災者向けのチラシ「家の被害状況を写真で記録しましょう」で、片付けや修理の前に、家の外と中の写真を撮るよう呼びかけています。罹災証明書を取るときにも、保険会社に損害保険を請求するときにも、たいへん役に立つとしています。

罹災証明書の申請のために撮っておきたい写真(内閣府のチラシと手引きから)
撮る場所撮り方メモ
家の外の全景カメラやスマホで、なるべく4方向から自己判定方式では、周囲4面の全景(4枚以上)が必要とされる
表札どの家かがわかるように自己判定方式で必要とされる写真の一つ
浸水の深さ浸水の跡にメジャーなどを当て、「引き」と「寄り」の両方を撮る水害の木造・プレハブの戸建ては、浸水の深さで判定する調査がある
家の中の部屋ごとの全景被災した部屋ごとに、部屋全体を撮る被害を受けた部屋は、すべて撮る
被害箇所の寄り被害箇所の全体がわかる範囲と、近づいた写真内壁、床、窓、出入口、サッシ、襖、障子、システムキッチン、洗面台、便器、ユニットバスなど
外壁・基礎・屋根の損傷ひびや割れは、全体の中の位置がわかる写真と、近づいた写真屋根は無理に上らず、地上から撮れる範囲で

枚数に上限はありません。内閣府が調査の担当者向けに示している撮り方でも、示した枚数は最低限の目安で、それ以上撮っても構わないとされています。迷ったら多めに撮ってください。

撮り方のコツ

内閣府が市町村の調査の担当者向けに示している留意点は、被災者が撮るときにも参考になります。

  • 被害箇所は漏れなく。被害を受けた部屋・箇所は、すべて撮ります。
  • 被害の広さがわかるように。壁や床のどのくらいの範囲が傷んでいるかがわかるよう、被害箇所を含む広めの範囲を撮り、そのうえで近づいた写真を撮ります。
  • 指でさして撮る。後で写真を見たときに、何を撮ったのかがわかりやすくなります。
  • 明るさと手ぶれに注意する。屋外は逆光での白飛びや暗さによるつぶれに、室内は手ぶれやフラッシュの反射に気をつけます。
  • 端末の日時を正しくしておく。内閣府は調査の担当者に、カメラの日時設定を正確にして撮影日時の記録を残すよう求めています。スマートフォンは日時を自動設定にしておきます。
  • 加工しない。明るさの調整やトリミングをせず、撮ったままのファイルを残します。

被害の区分と、写真が大事になる理由

住家の被害の程度は、内閣府の運用指針にもとづき、住家全体の損害割合などで次のように区分されます。

住家の被害の程度(内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」から)
区分住家の損害割合損壊などした部分の床面積の割合
全壊50%以上70%以上
大規模半壊40%以上50%未満50%以上70%未満
中規模半壊30%以上40%未満30%以上50%未満
半壊20%以上30%未満20%以上30%未満
準半壊10%以上20%未満10%以上20%未満
準半壊に至らない(一部損壊)10%未満—

区分によって受けられる支援が変わります。たとえば住宅の応急修理の対象は、大規模半壊・中規模半壊・半壊・準半壊です(内閣府のリーフレット)。損害割合は、屋根・外壁・床・内壁・設備などの部位ごとの損傷を足し合わせて計算するため、部位ごとの被害がわかる写真が判定の材料になります。水害で木造・プレハブの戸建て(1〜2階)を調べる第1次調査は浸水の深さで判定するため、浸水の深さがわかる写真が特に大切です。

写真だけで判定される場合(自己判定方式)

被害が明らかに軽い場合に、被災者が撮った写真で判定し、市町村の現地調査を省く方式を「自己判定方式」といいます。内閣府の通知で示されている方式で、被害が「準半壊に至らない(一部損壊)」であることに被災者が同意する場合に使えます。

  • 条件:岐阜市は、①被災者が撮った写真などで被害の状況を確認できる、②被害の程度が「準半壊に至らない(一部損壊)」(家屋全体の損害割合が10%未満)であることを確認できる、③その判定結果に同意する、の3つをすべて満たす場合としています。
  • 一部損壊の例(岐阜市):床下浸水、瓦など屋根の一部の破損、庇(ひさし)の破損、外壁の一部のひび割れ、窓ガラスの破損など。
  • 必要な写真:内閣府の手引きは、建物の全景(周囲4面、4枚以上)、表札、被害を受けた部分の写真を挙げ、図面があれば役立つとしています。
  • 早く交付される:現地調査を省くため、比較的早く交付されます。千葉市は、写真による判定の場合1〜2週間程度としています。

自己判定方式を選ぶ前に確かめたいこと。写真で一部損壊と言えない場合や、結果に同意しない場合は、通常の現地調査になります。一方で、自己判定方式で証明書を受け取ると、あとから調査を求められなくなる自治体があります。仙台市の事務取扱要領は、自己判定用の罹災証明書の交付を受けた人は、その住家について第2次調査を申請できないと定めています。「本当は一部損壊より大きいかもしれない」と思うときは、通常の調査を申し込むことを考え、自治体の窓口で扱いを確かめてください。

このほか、地震で写真から一見して全壊とわかる場合や、水害で写真から浸水の深さを確認できる場合も、現地調査を省略できるとされています(内閣府の申請書の統一様式の記載例)。

申請のしかた(窓口・オンライン・印刷)

  • 窓口:市区町村の窓口で申請します。千葉市は写真をカラーで印刷して用意するよう案内し、岡山市は写真がなくても申請できるが、できるだけ印刷して持ってくるよう案内しています。印刷した写真でよく、被害箇所は手書きの図でもよいとした自治体の例も内閣府の手引きに載っています。
  • オンライン(マイナポータル):マイナンバーカードを使い、マイナポータルから申請できる自治体があります。デジタル庁の案内では、マイナポータルの「さがす」で自治体を設定して「罹災証明書」で検索し、「【災害】罹災証明書の発行申請」を選びます。項目が出てこなければ、その自治体は対応していません。令和8年熊本地震では、2026年8月20日時点で18市町村がオンラインの申請を受け付けていました(うち12はマイナポータル、6は自治体独自のフォーム)。熊本市は、マイナポータルで自己判定方式を選ぶと写真の添付が必須になると案内しています。
  • 自治体の電子申請:船橋市・柏市・横浜市などは独自の電子申請を用意しています。柏市は添付できるファイルを20ファイル・合計5MBまでとし、撮影日を明記するよう求めています。横浜市は、写真はなるべく日付のわかるものを、としています。
  • 申請の期限:市町村によって違います(たとえばさいたま市は、交付期間を災害の発生日から原則6か月以内としています)。早めに申請してください。

片付け・修理の前にしておくこと

  • 写真を撮れば、片付けや修理を始めてかまいません。内閣府は2020年7月の豪雨のとき、被害の状況がわかる写真を撮っておけば、調査の前でも補修などを始めてかまわないと自治体に示しています。生活の再建を急ぐためにも、先に写真を撮ってください。
  • 取り壊しや大きな修理の前には、市町村に連絡する。内閣府の手引きの Q&A は、取り壊しや補修の前に市町村に連絡し、やむを得ず先に行う場合は損傷がわかる写真を残すよう案内しています。
  • 写真がないと、罹災証明書が出ないことがあります。さいたま市は、改修済みで被災の写真なども記録しておらず被害の事実を確認できない場合は、罹災証明書ではなく、届出を受理したことを証明する「被災届出受理証」を交付するとしています。外観に損傷がない雨漏りも、同市では罹災証明書の対象外としています。
  • 応急修理を使うときも写真が要ります。内閣府のリーフレットによると、住宅の応急修理の申込みには見積書や罹災証明書の写しなどが必要で、現場の写真を出すか見せることになっています。ブルーシートを張るなどの緊急の修理は、準半壊以上にあたるかを損傷箇所の写真で確かめ、原則10日以内に完了するものとされています。

判定に納得できないとき(第2次調査・再調査)

  • 交付した市町村に申し込みます。内閣府の手引きでは、外観から調べる第1次調査の結果に納得できなければ家の中まで調べる第2次調査を、第2次調査の結果に納得できなければ再調査を申し込む流れです。納得できない点をはっきりさせたうえで申し込みます。
  • 期限は自治体ごとに違います。富山市は再調査を交付の翌日から3か月以内(2回まで)、仙台市は第2次調査を交付の翌日から3か月以内(口頭でも可)としています。内閣府の手引きには、交付の翌日から10日以内とする自治体の例も載っています。
  • 判定が上がるとは限りません。内閣府は自治体に、調べ直した結果は変わりうることを理解したうえで申し込んでもらうよう求めています。千葉市は、第2次調査で判定が下がることがあり、その場合は交付済みの証明書を返してもらうとしています。
  • 写真は、調べ直すときの材料にもなります。内閣府は、調査の写真は再調査の依頼があったときに内容を確かめる根拠資料にも使われるとしています。自分で撮った写真も、どこが判定と食い違っているかを説明するのに役立ちます。

保険の請求とは別に判定される

罹災証明書の被害の判定と、火災保険・地震保険の損害の認定は、目的も方法も別です。内閣府の手引きは、地震保険の調査は保険金を支払うため、住家の被害認定は支援策の適用を決めるために行うもので、調査の方法も異なると説明しています。家財の被害は、住家の被害認定には反映されません。

  • 日本損害保険協会は、地震保険の請求に罹災証明書は必要ないと案内しています。
  • 同じ写真が両方に役立ちます。保険の請求で撮っておきたい写真(家財のメーカー名・型番など)は、火災保険・地震保険の写真の撮り方で解説しています。

写真の残し方

  • 撮ったままの元のファイルを残す。LINE などで送ると、画像が縮小されたり、撮影日時などの記録が消えたりすることがあります。窓口やオンラインで出した後も、元のファイルは手元に残してください。
  • 2か所以上に保存する。スマートフォンが水没したり壊れたりすることもあります。家族のスマートフォン、クラウド、パソコンなどにもコピーを残します。
  • 撮影日時が残っているか確かめる。写真の撮影日時・位置情報の確認ツール(無料・登録不要。画像はブラウザの中だけで読み取り、送信しません)で、ファイルに撮影日時が記録されているかを確かめられます。撮影日時は端末の時計にもとづく記録で、後から変えることもできるため、それだけで「その日に撮った」証明にはなりません。

PEA について

罹災証明書の申請に、PEA の鑑定書は必要ありません。申請には、撮ったままの写真をそのまま使ってください。

PEA は、画像を性質の異なる8つの解析で調べ、AI による生成・加工の手がかりを1〜10のグレードで示す画像鑑定サービスです。被害の程度や、被害がいつ・何によって起きたかを判断するものではありません。役立つ場面があるとすれば、修理業者や保険会社との話し合いで「その写真は修理の前の状態か」が問題になりそうなときです。鑑定すると、写真のファイルのハッシュ値に電子署名と第三者のタイムスタンプ(RFC 3161)が付き、7日以内に鑑定書にすると、相手が証明書番号で「遅くとも鑑定した時点でそのファイルが存在し、以後変わっていない」ことを確かめられます。撮影した日時や、写っている被害がいつ起きたかを示すものではなく、タイムスタンプは総務大臣の認定を受けたものではありません。

よくある質問

罹災証明書の写真は、どこを何枚撮ればいいですか?

内閣府の被災者向けのチラシは、家の外をなるべく4方向から撮り、家の中は被災した部屋ごとの全景と被害箇所の「寄り」を撮り、被害を受けた部屋・箇所はすべて撮るよう案内しています。浸水した場合は、メジャーなどを当てて「引き」と「寄り」で深さがわかるように撮ります。枚数に決まりはないので、多めに撮っておきます。写真だけで判定される自己判定方式では、建物の全景(周囲4面)、表札、被害を受けた部分の写真が必要とされています。

スマホの写真で大丈夫ですか?印刷は必要ですか?

スマートフォンで撮った写真で構いません。出し方は自治体によって違い、窓口ではカラーで印刷した写真を求める自治体(千葉市など)もあれば、マイナポータルや自治体の電子申請で写真を添付できるところもあります。お住まいの自治体の案内を確かめてください。撮影日がわかる写真を求める自治体もあるため、撮ったままの元のファイルを残しておきましょう。

写真を撮る前に片付けや修理をしてしまったら、どうなりますか?

まず市町村に相談してください。内閣府の指針は、片付けや修理で損傷が確認できない場合は、被災者が出した写真や聞き取りで把握することもあるとしています。ただし、さいたま市のように、改修済みで写真なども残っておらず被害が確認できない場合は、罹災証明書ではなく、届出を受理したことを示す「被災届出受理証」を交付する自治体もあります。これから片付けや修理をするなら、その前に撮ってください。

自己判定方式とは何ですか?

被害が明らかに軽く、「準半壊に至らない(一部損壊)」と判定されることに被災者が同意する場合に、被災者が撮った写真で判定し、市町村の現地調査を省く方式です。床下浸水、屋根の瓦の一部の破損、窓ガラスの破損などが例に挙がっています。早く交付される一方、仙台市のように、自己判定用の証明書を受けると第2次調査を申請できないと定めている自治体もあります。被害がもっと大きいかもしれないときは、通常の調査を申し込むことを考えてください。

罹災証明書の判定に納得できないときは、どうすればいいですか?

交付した市町村に、第2次調査や再調査を申し込めます。内閣府の手引きでは、第1次調査に納得できなければ家の中まで調べる第2次調査を、第2次調査の結果に納得できなければ再調査を申し込む流れです。申込みの期限は自治体によって違い、富山市や仙台市は交付の翌日から3か月以内です。調べ直した結果、判定が上がるとは限らず、下がることもあります。

出典