証拠説明書とは

民事訴訟規則第137条は、書証(文書の証拠)を出すときは写しを出すとともに、文書の記載から明らかな場合を除き、文書の標目・作成者・立証趣旨を明らかにした証拠説明書を出さなければならないと定めています。写真などの「文書に準ずる物件」にも、同じ定めが準用されます(第147条)。

  • 相手にも直接送る:写しと証拠説明書は、相手方に直接送ること(直送)が必要です(第137条第2項)。
  • 2026年5月21日の改正:写しを「二通」出すという定めがなくなり、直送が義務になりました。文書の画像(PDF)をオンラインで出すこともできます(第137条第3項)。写真のデータそのものを証拠にするときは、同じ内容の「電子証拠説明書」を出します(第149条の2)。最高裁判所の記載要領は、この2つを兼ねた1つの書面にして出すよう案内しています。
  • 改正の前に起こされた事件:2026年5月20日以前に起こされた事件には、改正前の規則が使われます(写しは2通、相手方が2人以上ならその数に1を足した通数)。
  • 関係する部分を示す:改正で、証拠の申出を必要かつ十分なものにし、写しの上で関係する部分を明らかにするよう努めることも定められました(第137条の2)。

簡易裁判所の通常訴訟・少額訴訟についても、東京簡易裁判所が証拠説明書の書式と記載例を公開しています。少額訴訟では、証拠は審理の日にその場ですぐ調べられるものに限られます(民事訴訟法第371条)。

書く項目と書き方(号証・標目・作成年月日・作成者・立証趣旨)

最高裁判所の新しい書式(2026年5月21日以降に起こされた事件用、Excel)は、「号証・標目・作成年月日・作成者・立証趣旨・備考」の6列で、原本か写しかは標目の欄に書きます。各地の裁判所の書式には「原本・写しの別」の列があるものもあります。

証拠説明書に書く項目(最高裁判所の書式・記載要領をもとに作成)
項目書くこと記載例
号証証拠の番号。原告が出すものは「甲」、被告は「乙」。関連する証拠をまとめて出すときは枝番号甲001、甲002-1、乙A001
標目証拠の標題(何の書面・データか)。紙の書証を原本として出すときは「原本」、写ししかないときは「写し」を書き添える。データ(電磁的記録)として出すときは標題だけ売買契約書原本、契約書写し、SNS上のやり取り
作成年月日その証拠が作られた日。写真は撮影日R5.10.1
作成者その証拠を作った人。写真は撮影者原告・被告
立証趣旨その証拠で証明したいこと原告が300万円を支払った事実
備考補足(紙の証拠を電子化したものか、など)紙を電子化

立証趣旨は、「○○の事実」のように、その証拠で何を証明したいかを具体的に書きます。標目は、できるだけ文書の標題どおりに書き、標題のないものは「封筒」のように形や内容で特定できるように書きます。

写真の書き方と記載例

写真(と録音・録画)の証拠説明書には、通常の項目に加えて、撮影の対象と、その日時・場所を書かなければなりません(民事訴訟規則第148条)。写真のデータをそのまま出す場合も同じです(第149条の4)。

  • 撮影者も書く:条文にはありませんが、知的財産高等裁判所は撮影対象・撮影者・撮影日時・場所を標目に書くよう案内しており、札幌家庭裁判所の資料も撮影者の記載を実務上求めているとしています。作成者の欄に撮影者、作成年月日の欄に撮影日(必要に応じて時刻も)を書く記載例があります(松江地方裁判所)。
  • 原本か写しか:大阪地方裁判所(知的財産権部)は、デジタルカメラで撮って印刷した写真は、原則として原本になるとしています。
  • 何枚もあるとき:写真撮影報告書にまとめて出す方法を案内している裁判所があります(松江・和歌山)。その場合は、報告書の中に撮影の対象・日時・場所・撮影者を書きます(札幌家庭裁判所)。
写真の記載例(架空の例。和歌山地方裁判所の記載例の形にならい、退去時の部屋の写真を出す場合)
号証標目作成年月日作成者立証趣旨
甲3写真 原本(撮影対象:○○マンション301号室の洋室の壁と床/撮影日時:令和8年3月31日午前10時ごろ/撮影場所:東京都○○区○○1丁目2番3号 ○○マンション301号室)R8.3.31原告退去日の時点で、洋室の壁と床に目立つ傷や汚れがなかった事実

撮影日は、スマートフォンの写真に残っている撮影日時の記録(Exif)で確かめられます。ただし、撮影日時は写真アプリで後から変えられるので、撮影したときのメモや前後の写真とも照らし合わせておきましょう(写真の日付を証明するには)。

加工・補正した写真を出すときは、元の写真もあわせて出し、どこをどう加工したかを書いておきましょう。AI で画質を補正した場合について、研究会の取りまとめ(商事法務研究会、2026年8月)は、証拠説明書などで AI を使ったかどうかと、その範囲を明らかにする慣行が期待されると述べています。

LINE・SNS のスクショ、ウェブページの書き方

最高裁判所の記載例は、SNS 上のやり取りのデータを証拠として出す場合を、次のように書いています。

最高裁判所の記載例(SNS上のやり取りの電子データを電磁的記録として出す場合)
号証標目作成年月日作成者立証趣旨
甲004SNS上のやり取りR5.9.30原告・被告原告と被告が売買契約締結に向けた交渉をしていた事実(※作成日は令和5年9月9日から同月30日までの間であり、作成日欄の記載は特に重要な部分の日付である)
  • 作成者は、やり取りをした本人:データをコピーして出す場合も、作成者・作成年月日には、コピーした人・日ではなく、もともとのデータを作った人・日を書くよう案内されています(最高裁判所の記載要領)。札幌家庭裁判所の資料も、画像データやウェブページなどの電子情報を印刷した書面は「原本」とし、作成者・作成年月日には電子情報そのものの作成者・年月日を書くよう求めています。
  • LINE の例:和歌山地方裁判所の記載例は、標目を「『こんにちは』で始まる原告被告間のLINE上でのやりとりをプリントアウトした書面」、原本、作成者を「原告及び被告」としています。
  • やり取りが長い期間にわたるとき:上の最高裁判所の例のように、作成年月日には特に重要な部分の日付を書き、期間を注記します。最高裁判所の手引は、SNS やチャットの長いやり取りを出す場合を例に挙げ、関係する部分を PDF の蛍光ペン機能などで示し、どこに手を加えたかを備考などで分かるようにする方法を示しています。

裁判所によって扱いが違う点があります。ウェブページを印刷した書面の作成者を、発信者とする資料(大阪地方裁判所 知的財産権部。メールを印刷した書面も同じ)、サイトの運営者とする記載例(和歌山地方裁判所)、印刷した人とし、作成年月日を印刷した日とする記載例(松江地方裁判所)があります。各地の資料の多くは2026年の改正の前に作られたものです。提出先の裁判所の書式・記載例を確かめ、迷ったら担当の書記官に聞いてください。

スクショそのものの撮り方(日時や相手の名前が写るようにする、前後のやり取りも残す、元のトークを消さない)はスクショは証拠になる?で、LINE のトークを証拠として残す方法は浮気・不貞の証拠はLINEだけで足りる?で解説しています。

号証の付け方と、写真が何枚もあるとき

  • 原告が出すものは「甲」、被告は「乙」、参加人は「丙」。被告が複数いるときは「乙A」「乙B」とすることが多いとされています(最高裁判所の記載要領)。
  • 関連する証拠をまとめて出すときは、枝番号を付けます(「甲002-1」「甲002-2」。紙の資料では「甲第1号証の1」「甲1の1」とも書きます)。
  • mints で出すときは、書証かデータかを区別せずに通し番号を付け、証拠のデータの右上にも番号を書きます。枝番がある場合を除き、原則として1つの証拠を1つのファイルで出します(最高裁判所の手引)。
  • 紙で出すときは、書証の右上の余白に番号を書きます(札幌家庭裁判所の資料)。
  • 写真が何枚もあるときの番号の付け方(1枚ずつ別の番号にする、枝番号でまとめる、写真撮影報告書にまとめる)は、裁判所の案内が分かれます。種類の違う書面を1つの欄にまとめて書くのは避けるよう求める資料もあります(大阪地方裁判所 知的財産権部)。

オンラインで出すとき(mints)とファイル形式

2026年5月21日に施行された改正民事訴訟法・改正民事訴訟規則で、民事裁判の書類をインターネットで出せるようになりました。使うのは「民事裁判書類電子提出システム(mints)」で、アカウントは誰でも登録できます。弁護士などの訴訟代理人はオンラインでの提出が義務ですが、本人で裁判をする場合は、これまでどおり紙でも出せます。

mints で出すときのファイル形式(細則・操作マニュアル、2026年10月時点)
出すものファイル形式など
書証の画像(文書の写しの代わり)PDF(A4 か A3)
データそのもの(電磁的記録。写真のデータなど)PDF・JPEG・PNG・MP4・MP3
1回のアップロード合計200MBまで。パスワード付きのファイルは出せない。ファイル名は拡張子を含めて100文字まで
  • iPhone の写真(HEIC 形式):上の一覧にない形式なので、オンラインで出すなら JPEG などで書き出したものを使うことになると考えられます。書き出したファイルは元の写真とは別のファイルになるので、元の写真は編集せずに保管しておきましょう。
  • 証拠説明書も mints に:mints を使う場合は、証拠説明書も mints にアップロードします(最高裁判所の記載要領)。
  • 紙の書証は期日に持参:紙の書証を取り調べるときは、原則として、原本か写しかを問わず、期日に紙の書証を持って行く必要があります(同)。
  • 対象外の事件・手続:2026年5月20日以前に起こされた事件は、引き続き書面で進みます。離婚などの人事訴訟と家事事件は、令和10年6月までにオンライン化される予定です。

「加工した写真だ」と言われたとき・相手の画像が偽物だと思うとき

  • 写真やデータも、本物であること(成立の真正)を、出した側が証明しなければなりません(民事訴訟法第228条第1項。写真には第231条、データには第231条の3で準用)。
  • 反対に、相手が成立を否認するときは、その理由を明らかにしなければなりません(民事訴訟規則第145条)。わざと、または重大な過失で、真実に反して成立の真正を争うと、10万円以下の過料の対象になります(民事訴訟法第230条)。
  • 成立が争われると、原本の提出を求められることがあります(最高裁判所の記載要領)。元の写真のファイル、撮影した端末、撮影したときのメモや前後の写真を残しておきましょう。
  • 相手の画像が偽物だと主張するために、その画像を自分の側から証拠として出すときは、標目に偽造文書であることを書き、作成者の欄に偽造した人を書く記載例があります(和歌山地方裁判所)。

疑われたときの準備は証拠の写真を「AIで作った」「加工した」と疑われたらで、写真が証拠としてどう扱われるかは写真は証拠になる?で、画像の真偽が争われた裁判は捏造画像・AI画像が問題になった日本の裁判と事件で解説しています。

PEA でできること

PEA の鑑定書は、証拠説明書を書くときや、写真が本物かを説明するときの手元の資料になります。

  • 撮影情報の確認:写真のファイルに残っている撮影日時・機種・位置情報・編集ソフトの記録と、電子署名つきの来歴(C2PA)の有無を示します。撮影日時の記録は書き換えられるので、それだけで撮影日の証明にはなりません。
  • ファイルの封印:鑑定した時点のファイルのハッシュ値に、電子署名と外部の時刻認証局のタイムスタンプを付けます。「遅くとも鑑定した時点でそのファイルが存在し、以後変わっていない」ことを、証明書番号から第三者が照合ページで確かめられます。
  • AI・加工の手がかり:性質の異なる8つの解析で、AI による生成・加工の手がかりの有無と根拠を示します。根拠を示せない画像は「判定外」とします。

鑑定書を証拠として出すか、どう評価されるかは裁判所の判断です。不安があるときは弁護士に相談してください。無料の鑑定は1日1件まで(登録なしで1回お試しできます)。鑑定書は1件¥1,000です。無料で鑑定する

よくある質問

証拠説明書とは何ですか?

裁判所に証拠を出すときに、証拠ごとに号証・標目・作成年月日・作成者・立証趣旨(その証拠で証明したいこと)を書いて一緒に出す書面です。民事訴訟規則第137条は、書証を出すときは写しとともに、文書の標目・作成者・立証趣旨を明らかにした証拠説明書を出すよう定めています。写真などにも準用されます(第147条)。

写真の証拠説明書には何を書けばいいですか?

号証・標目・作成年月日・作成者・立証趣旨に加えて、撮影の対象と、撮影の日時・場所を書きます(民事訴訟規則第148条)。条文にはありませんが、撮影者も書くよう求める裁判所が多く、作成者の欄に撮影者、作成年月日の欄に撮影日を書く記載例があります。写真が何枚もあるときは、写真撮影報告書にまとめる方法を案内している裁判所もあります。

LINEのトークのスクショの作成者は誰と書けばいいですか?

最高裁判所の記載例では、SNS上のやり取りの作成者を「原告・被告」とし、作成年月日には特に重要な部分の日付を書いています。データをコピーして出すときも、作成者にはコピーした人ではなく、もともとのデータを作った人を書くよう案内されています。ただ、印刷した画面などの作成者・作成年月日・原本か写しかの書き方は裁判所の資料でも分かれるので、提出先の書式・記載例を確かめ、迷ったら担当の書記官に聞いてください。

証拠説明書の書式はどこで手に入りますか?

裁判所のウェブサイトの「改正民訴法等に関する参考資料」に、2026年5月21日以降に起こされた事件用の証拠説明書の書式(Excel)と、記載要領・記載例が載っています。各地の地方裁判所・簡易裁判所のページにも書式や記載例がありますが、2026年の改正の前に作られたものも多いので、作成時期を確かめてください。

スマホの写真をデータのまま出せますか?

2026年5月21日以降に起こされた事件では、写真のデータそのものを証拠(電磁的記録)として出せます。オンライン(民事裁判書類電子提出システム mints)で出すときのファイル形式は、PDF・JPEG・PNG・MP4・MP3 と定められています。本人で裁判をする場合は、紙に印刷して出すこともできます。どちらの場合も、元の写真のファイルは編集せずに保管しておいてください。

出典