見た目だけで見分けるのが難しくなった理由

以前の画像生成AIは、指の本数や看板の文字がおかしいなど、見ればわかる失敗をよくしていました。いまの生成AIではそうした失敗が減り、人の目でも区別しにくい画像が増えています。

AI判定ツールも万能ではありません。

  • 米国立標準技術研究所(NIST)の報告書は、判定ツールが学習していない生成AIの画像では、圧縮や縮小を経ると誤りが大きくなると指摘しています。例として、正解率が61〜70%にとどまった研究が紹介されています。
  • 2025年の国際会議 ICLR で発表された研究では、人の目でも見分けにくい AI 画像を集めて試したところ、既存の判定ツールのほとんどが AI 画像を「本物」と判定しました。
  • 反対に、本物の写真を AI 製と判定してしまう誤り(偽陽性)もあります。NIST は、この誤りが評判の低下など深刻な不利益につながり得ると注意を促しています。

そのため、「AIっぽく見えるか」という印象ではなく、「AIで作られたことを示す客観的な手がかりがあるか」を順に確かめるのが確実です。

AI画像を確かめる6つの方法

6つの方法は、見つかったときの手がかりの強さと限界がそれぞれ違います。おおむね上から順に、見つかったときの手がかりが強いものです。

AI画像を確かめる6つの方法
方法強い手がかりになるもの限界
① 電子署名(C2PA)「生成AIで作成」と記録された、有効な署名付いていない画像が多く、SNS やスクリーンショットで消える
② 電子透かし(SynthID)画像に埋め込まれた、生成AIの透かしの検出透かしを入れる生成AIの画像しかわからない
③ メタデータ「Created using Generative AI」などの記録消えやすく、後から書き加えることもできる
④ 見た目の破綻指・文字・反射・左右の対などの矛盾最新の生成AIでは出ないことが多い
⑤ 逆画像検索AI の作品として先に公開されているなどの出どころ見つからないことは本物の証拠にならない
⑥ AI判定ツールほかの手がかりと同じ向きの結果未知の生成AIや圧縮で誤る。数字だけで決めない

① 電子署名(C2PA)を確かめる

主な画像生成サービスは、作った画像に C2PA という国際規格の電子署名つきの来歴(コンテンツクレデンシャル)を付けています。たとえば OpenAI(ChatGPT など)、Adobe Firefly、Microsoft の Azure OpenAI、Google の Nano Banana Pro で作った画像には、生成AIで作られたことが記録されます。

  • 画像を検証サイト(Content Credentials Verify)に読み込むと、どのサービスやソフトで作られたか、生成AIが使われたかを確認できます。
  • 署名は、署名したあとに画像が書き換えられていないかも確かめられるため、見つかれば強い根拠になります。
  • ただし、SNS への投稿やスクリーンショットで署名が消えることが多く、署名の付いていない画像のほうがずっと多いのが現状です。
  • 画面に「CR」のマークが表示されていても、マーク自体は絵として真似できます。マークではなく、検証サイトで署名そのものを確かめてください。

C2PA の仕組みや、対応しているカメラ・スマートフォンはC2PA(コンテンツクレデンシャル)とはで詳しく説明しています。

② 電子透かし(SynthID)を確かめる

SynthID は、Google DeepMind が開発した目に見えない電子透かしです。Google の生成AIで作ったり編集したりした画像に埋め込まれ、圧縮や色の調整といった一般的な加工では消えにくいように作られています。

  • Google の Gemini アプリに画像をアップロードし、「この画像は Google の AI で作られましたか?」と聞くと、SynthID が含まれているかを確かめられます(2025年11月開始)。2026年5月には、Google 検索でも確かめられるよう対象を広げると発表されました。
  • OpenAI も2026年5月から、ChatGPT などで作った画像に C2PA と SynthID の両方を入れ、画像を確かめられる検証ページを公開しています。
  • わかるのは、SynthID を入れている生成AIで作られた画像だけです。透かしが検出されないことは、人が撮った・描いた証拠になりません。

③ メタデータの「生成AI」の記録を見る

画像ファイルには、撮影や作成の情報(メタデータ)を書き込む場所があります。報道写真などのメタデータの規格を定める IPTC は、生成AIで作った画像を示す値として「trainedAlgorithmicMedia(Created using Generative AI)」、生成AIで一部を編集した画像を示す値として「compositeWithTrainedAlgorithmicMedia(Edited using Generative AI)」を定めています。

  • 生成AIのサービスや編集ソフトの中には、この値を書き込むものがあります。メタデータ(XMP)を表示できるツールで「Digital Source Type」の項目を探してください。
  • 多くの SNS は投稿された画像のメタデータを削除します。記録が無いことは、AI 画像でない根拠になりません。記録がある場合も、後から書き加えることができるため、ほかの手がかりとあわせて判断します。

④ 見た目の破綻を探す

画像を拡大して、次のような点を確かめます。

  • 手と指:指の本数、関節の曲がり方、指輪や爪のつながり。
  • 文字:看板・ラベル・書類の文字が、読める言葉になっているか。
  • 左右の対:ピアスやイヤリング、眼鏡のつる、襟の形が左右で食い違っていないか。
  • 光・影・反射:影の向きがそろっているか、瞳や鏡・窓に映るものが周りと合っているか。
  • 背景:人や物が溶け合っていないか、建物の直線がゆがんでいないか、同じ模様が不自然に繰り返されていないか。
  • 質感:肌や髪が均一すぎないか、細部だけがつるっとしていないか。

破綻が見つからないことは、本物の証拠になりません。最新の生成AIではこうした破綻が出ないことが多く、反対に本物の写真でも、美肌補正や手ぶれ、強い圧縮で似た不自然さが出ることがあります。見た目は、ほかの手がかりを補うものとして使ってください。

Google レンズや TinEye で画像を検索し、同じ画像がどこで最初に公開されたかを調べます。AI で作った作品として先に公開されていれば、強い手がかりになります。

  • 人物の写真なら、同じ人の別の写真(別の日・別の場所で撮られたもの)が見つかるかも手がかりになります。
  • AI で1枚だけ作られた画像や、撮ったばかりの写真は、そもそも検索に出てきません。見つからないことは、本物の証拠にも AI の証拠にもなりません。

マッチングアプリや SNS で知り合った相手の写真を確かめたいときは、画像検索で出てこない写真はAI?もあわせて読んでください。

⑥ AI判定ツールの結果を読む

画像をアップロードすると「AI 87%」のような数字を出す判定ツールは手軽ですが、数字の意味には注意が必要です。この数字は、そのツールが学習したデータに照らした「AIらしさ」の目安で、「87%の確率で AI 画像である」という意味ではありません。

実際に出回った偽の画像や動画を集めた研究(Deepfake-Eval-2024)では、公開されている判定ツールの性能を示す指標(AUC)が、従来の評価用データと比べて、画像で45%低下しました。

  • 1つのツールの数字だけで決めず、①〜⑤の手がかりと同じ向きかを確かめる。
  • スクリーンショットや SNS から保存した画像は判断の材料が減っていて誤りやすいので、できるだけ元のファイルで試す。
  • 「どこが、なぜ AI らしいのか」という根拠を示すツールを選ぶ。

PEA が1つの判定ツールの数字で決めない理由と判定の基準は、AI画像判定の仕組みで公開しています。

見分けられないケース

  • SNS やメッセージアプリを経た画像、スクリーンショット:電子署名やメタデータが消え、細部の痕跡も再圧縮で失われます。この状態では、劣化した本物の写真と AI 画像を区別できないことがあります。
  • 本物の写真の一部だけを AI で描き換えた画像:大部分は本物の写真なので、判定ツールでも見逃しやすくなります。部分的な加工の調べ方は画像が加工されているか調べる方法で説明しています。
  • 画面に表示した AI 画像を、カメラで撮り直した画像:カメラで撮った写真の特徴が加わるため、判定がさらに難しくなります。

何も見つからなかったときは、「本物」ではなく「判断の材料が足りない」と受け止めるのが正確です。

AI画像かもしれないと思ったら

  1. 広めない。真偽がわからないうちは、転送や再投稿を控えます。
  2. 記録を残す。画像のファイルそのもの、投稿の URL、投稿者と日時がわかる画面を保存しておきます。
  3. お金の話が出たら、送る前に相談する。警察庁は、翻訳アプリや生成AIを使えば誰でも簡単に他人になりすませると注意を呼びかけています。投資や送金を求められたら、警察相談専用電話(#9110)や消費者ホットライン(188)に相談してください。

PEA で調べるとどうなるか

PEA は、電子署名や生成AIの記録、画像に残る痕跡、光と影や人物・文字の整合を、性質の異なる8つの解析でまとめて確かめ、結果がどれだけ同じ向きにそろうかで1〜10のグレードを付けます。1つの判定ツールの数字では決めず、判断の材料が足りない画像は「判定不能(グレード5)」と表示します。

  • ②の電子透かし(SynthID)と⑤の逆画像検索は、現在の PEA の鑑定には含まれていません。Gemini アプリや Google レンズをあわせて使ってください。
  • 無料の鑑定(1日1件)で、グレードと判定の要約がわかります。
  • 残したい結果は7日以内に鑑定書(1件1,000円)にすると、すべての所見と PDF の鑑定書、第三者が照合できる封印(電子署名+タイムスタンプ)が付きます。

よくある質問

AIで作られた画像かどうか、確実に見分ける方法はありますか?

ありません。「生成AIで作成」と記録された有効な電子署名(C2PA)や、生成AIの電子透かし(SynthID)が見つかれば強い根拠になりますが、見つからないことは本物である証拠になりません。複数の方法で手がかりを集め、足りないときは「判断できない」と受け止めるのが正確です。

無料でAI画像かどうか調べる方法はありますか?

あります。電子署名は Content Credentials の検証サイト、Google の電子透かし(SynthID)は Gemini アプリ、出どころは Google レンズや TinEye で、いずれも無料で確かめられます。PEA も1日1件まで無料で鑑定できます。

AI判定ツールで「AI 90%」と出たら、AI画像と考えてよいですか?

その数字だけでは決められません。判定ツールの数字は、そのツールが学習したデータに照らした「AIらしさ」の目安です。学習していない生成AIの画像や、圧縮・縮小された画像では誤りが増えることが研究で示されています。電子署名や透かし、見た目の破綻など、別の手がかりと同じ向きかを確かめてください。

スマートフォンで撮った写真が、AI画像と判定されることはありますか?

あります。美肌補正や背景ぼかし、AI による消しゴム機能などの処理が入ると、判定ツールが AI 寄りの結果を出すことがあります。一部のスマートフォンや写真アプリは、生成AIで編集した写真にその記録(C2PA)を付けるので、記録があれば何を AI で編集したかを確かめられます。

SNS に投稿された AI 画像には、AI と表示されますか?

表示される場合もありますが、あてにはできません。多くのサービスは投稿された画像のメタデータを削除するため、生成AIの記録が消えていることがよくあります。表示がないことは、AI画像でない根拠になりません。

出典